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【ぴいぷる】小説家・真山仁、愚かしさに「アバヨ」 「ハゲタカ」シリーズ著者が初の社会派エッセーを上梓 (1/2ページ)

 ■失敗に向き合わない

 ベストセラー「ハゲタカ」シリーズの著者が、初の社会派エッセーを出した。「アディオス!ジャパン~日本はなぜ凋落したのか」(毎日新聞出版)。震災被災地、沖縄、韓国、ミャンマーなど国内外で見聞きしたことから独自の視点で危機的状況の日本の生き残る術を提起している。

 「500ページの小説になるテーマが、それぞれ20ページぐらいに凝縮されたエッセー集で、いわば私の小説のガイドブック。どのような発想から小説が生まれているかがわかります」

 通底する考え方のひとつは「日本人はすぐだれかのせいにする」ということ。

 「先の大戦も陸軍のせいにした。しかし、軍隊を支持したのは国民です。バブルが弾けたのも、ハゲタカ・ファンド(不良債権に群がって儲ける投資会社)が原因だと言う人もいますが、バブルが弾けたからハゲタカがやってきたわけで、順番が逆です。でも、ハゲタカのせいにすることで、日本人はホッとしてしまう」

 バブル崩壊後の企業買収がテーマの「ハゲタカ」を書いたのも、生命保険会社の関係者が「ウチの会社が潰れたのは、ハゲタカ・ファンドのせいだ」と言ったのがきっかけ。失敗した原因にきちんと向き合わず、すぐ人のせいにする日本の愚かしさを小説にしようと思った。

 「平成の30年間で昭和の総括もできていません。名門企業は助けるという時代は昭和で終わったはずなのに、政府は日本航空も東京電力も東芝も救っています。東芝は生き残るために、半導体という心臓を売ってしまった。日本を物づくり大国と呼ぶのであれば、東芝よりも半導体事業を残すべきでした。潰すものは潰して、責任を取らせることが前に進むためのあるべき姿。しかし、そうならない。経済界の人はよくスクラップ&ビルドと言いますが、スクラップできないから、ビルドもできません」

 リーマン・ショックの直後に東欧を取材したことも参考に2017年、小説「オペレーションZ」で歳出半減という不可能なミッションに挑むチームを描いた。

 ■小説家になるために

 「ハンガリーは20兆~30兆円で国家が破綻しました。向こうの政治家らから、日本は借金が1000兆円以上なのに、なぜ破綻しないのかと尋ねられました。もし日本が破綻したとき、助けられる国はありません。世界の金融はまったく機能しなくなります。海外の人はいつか日本が破綻すると思ってますが、日本人は見たくないものは見ない。見えるものしか見ません。バブル崩壊以降、顕著です。だれかが何とかしてくれると思っています。だから私は、見ないのなら、小説で見てもらおうと考えたわけです」

 小学生のころから漠然と小説家になれたらいいなと思っていた。高校時代には「ジャッカルの日」のフレデリック・フォーサイスのような、日本にはなかったポリティカル・フィクションという具体的な目標もできた。

 大学卒業後、新聞記者として働いたのも、小説家になるために取材力とわかりやすい文章を学びたかったから。ただ、見出しありきの原稿を書かなければならないことに悩み、2年半で退社。フリーライターをしていた1995年1月17日、阪神・淡路大震災が発生、神戸で被災する。

 「7階建ての1階に住んでいて、このまま圧死すると思ったら、怒りがこみあげてきました。忙しい中、1日2時間小説を書いて、年に2回ぐらい投稿。小説家になるため苦労して生きてきたのに、ここで殺すのかと思ったら地震が止まりました。よかったと思う一方、別のマンションでは押し潰されて亡くなっている人も多数いることも知りました。なぜ自分が生き残ったのか。最終的には、小説家になるために生きながらえた、ならないわけにはいかない、という結論に達しました」

 9年後のデビュー作品「ハゲタカ」などで、日本人が持っている価値観や常識を揺さぶることを続けている。

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