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【ぴいぷる】62歳の“新人”作家・鷹匠裕さん「『けしからん』という義憤が動機です」 (1/2ページ)

 「『けしからん』という義憤が動機です。論説のペンで糾弾するというわけにはいきませんが、フィクションという形で批判したりほめたりしながら」

 このほど、『帝王の誤算 小説 世界最大の広告代理店を創った男』(KADOKAWA)で本格的に作家デビューした。齢(よわい)62にして“新人”。だが、その新人の立場で、書き下ろしの単行本を出すのは異例中の異例、出版社の意気込みがうかがえる。

 この一作にたどり着くまでの道のりは実に長かった。

 「自衛隊の次期戦闘機選びを描いた『ファイター・ビズ』(城山三郎経済小説大賞候補)など、“自分の外の世界”の経済小説を書いて悶々としていたころ、ある編集者に『なぜ自分がいた業界のことを書かないの。身近な世界から逃げちゃダメ』と挑発されて、目からウロコが落ちるような気がしました」

 40年近く勤めた大手広告業界を舞台に話はリアルに展開する。

 「きっかけは『このままで広告業界はいいのか』という思いですね。広告代理店に勤めていた女子社員が自ら命を絶つという痛ましい事件が明るみに出たこともあり、企業の責任の取り方にも違和感があって、自分なりの捉え方で文章にしました」

 執筆業へのあこがれは幼少時に芽生えた。ペンネームの鷹匠裕は高校の時に自ら付けた。本物の鷹匠とは、縁もゆかりもないが、職人というありようが無性に格好良く感じた。

 だが学生時代は作家の道を選ぶ自信がなく、きらびやかで面白そうな広告代理店へ進む。

 「当時は何年か勤めたら書く道に進もうと考えていましたけれど…」

 クリエーティブな仕事に追われ、気がつけば50歳を超えた。ふと「オレって本当は何をやりたかったんだろう」と自問自答したとき、「小説を書きたかったんだ」と若い頃の自分を思い出した。

 「大学時代、将来を夢見ながら語り合える1つ年上の先輩がいて、卒業後も大阪に出張にいくと食事を一緒にする間柄でした。ある時、僕が読んだ本の面白さを伝えていると『そんなことよりも、お前はいつ(小説を)書くんだよ。書くって言っていたじゃないかよ』と発破をかけられたこともあり、約束を果たしたい気持ちもよみがえって」

 先輩とは、バラエティー番組「探偵!ナイトスクープ」(朝日放送)で初代顧問としてレギュラーを務めた弁護士の中島健仁さんだった。

 時間があれば筆をしたためるも、まったくの自己流。

 「お恥ずかしいんですが、書き方のイロハのイも知らない状態。原稿用紙の使い方とか、三点リーダーとかも全然知らなくて。ぶっつけで書いては『公募ガイド』などをみて賞に応募するという感じで」

 57歳の時に一度は会社を辞めようと考えたが、「プールの向こう岸にタッチするまでは会社にいよう」と定年を待った。

 「最後の3年はやったことのない営業職。取引先は霞が関の官庁や自治体などの公共事業を担当し、引き出しが増えました。サラリーマン生活があったから小説が書けた。定年までいなかったら、すぐにネタが尽きちゃったと思います」

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