zakzak

記事詳細

【ぴいぷる】平成の浮世絵師・東學さん 和紙、女体、寺院…ほとばしる制作欲「北斎のようになれたらええな」 (1/2ページ)

 天女と無数の蝶が蓮の上を舞う。蓮の隙間には、魑魅魍魎(ちみもうりょう)がうごめく。葉から上は極楽、下は地獄。横幅がふすま8枚分ほどある巨大な墨画『天獄[貮]』(2017年)。モノクロームの創造物だが、この人の手にかかると、今にも動き出しそうな生命力をはらむから不思議だ。

 「美しいものと美しくないものを描いて、光あるところに影があるという世界を表現してるんです」

 平成の浮世絵師は淡々とこう語る。

 15年の作品『天獄』では戦争、原爆、テロ、人種差別、天変地異など善悪や生き死にをこれでもかというほど詰め込んだ。壮大な絵巻はまるで墨画版「ゲルニカ」。こんな怖ろしい絵を描くのは、なぜ?

 「ふだんは、めちゃ陽気なタイプやから、危ないものを描いてバランスを保ってるんやと思う。心の暗い部分を絵に吐き出しとるんです」

 一般的な水墨画で使われるぼかしの手法は使わず、極細の面相筆(めんそうふで)で線を引く。こだわるのは女の髪。「髪の毛フェチ」というほど1本1本丁寧に、特に濡れて肌に張りついた髪を描写するのが好きだ。

 「上から塗り直しがきくアクリル画などとは違って、墨は線を失敗したら一からやり直し。その緊張感がええんです」

 父は、花を描かせれば右に出る者はいない扇絵師の東笙蒼(あずま・しょうそう)。その背中を見ながら絵筆に親しんだ。

 「長い間、『なんでおやじは花ばかり描くんやろ』と思とった。でもある時『なんや、おやじも俺と“同じもん”を描いてたんや』と気付いて、それから花が描けるようになった」。花は女性を表し、それも陰部を指す。

 和紙に限らず女体にも向かい、これまで153人に223の作品を仕上げた。花や虫など細密に表現し、1つ完成させるのに軽く7~8時間はかかる。モデルは自ら希望する女性たちで、現在50人あまりが待機中。週2人のペースで描いても「あと半年はかかる」というから恐れ入る。

 「和紙に描くか、体に描くかの違いだけ」とキャンバスの選択にはさして理由はなく、「カフカの『変身』が好きで、髪を虫っぽくするなど、自分の中でルールを1つ決めると発想が自由に浮かぶ。ルールがないと、かえってバラバラになる」。そのときどきでルールを変えて創っていく。

 仕上げたボディーペイントは自身で撮影。そこまでが創作で、最終的には写真集にする予定だ。

関連ニュース

アクセスランキング