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【ぴいぷる】茂木健一郎「脳科学者が小説を書いたって“ええじゃないか”」 でも…どうしたら売れるんでしょう? (1/2ページ)

 ご存じ、日本一有名な脳科学者。専門の著書も多いが、最近は小説も執筆領域のひとつ。

 「どうしたら小説は売れるんでしょうね」と先生、少々弱気だ。

 2015年の『東京藝大物語』(講談社)に続く近著は『ペンチメント』(同)。表題作の「ペンチメント」と「フレンチ・イグジット」の2作を所収している。

 ■ペンチメントとは人生描き直し

 ペンチメントとは、美術用語で描かれた絵の下の下絵や修正前の絵が見えること。

 「以前から絵画の下にもう1つの絵があることが気になっていたのですが、ペンチメントという用語があることをちゃんと認識したのは3年ぐらい前です。(直訳の)意味は“後悔”で、忘れていた昔の自分とか、あのときこうしていればよかったとか…ということをテーマに書きたかったんですね」

 不意に思い出す人生の分岐点。誰しもあるはずだ。

 「おそらくペンチメントを抱えていない人って世の中にいないんじゃないかなあ。僕は脳科学、認知科学を研究しているので、後悔とか人生描き直しを通してどう人間に迫れるか。そうしたことを小説で書くとこうなる、そういう試みなんです」

 物語の主人公は女子大生。アルバイトで小さな洋食屋を手伝うが、美大出身という初老の店主が描いた絵からペンチメントについて彼女なりの思考を深めていく。

 一方、フレンチ・イグジットとは、パーティーなどで別れを告げずにその場を去ること。

 「さよならを言わないで去っていくというのが基本的なモチーフです。人生で残酷なのは、共通の知人の話題になって『あいつ最近見ないな』なんて話していたら、『2年前に死んでいたんだって』と悲しい消息を知らされる。それがフレンチ・イグジット。また、若いときに夢をもっていたのに、年を重ねるうちにいつの間にかそういう自分が去っていくみたいなことってあるでしょう」

 中年男2人が、同級生だった男の自宅で開かれるパーティーに招かれたが、その結末で不思議なことが起きる。それらを描く物語は実験的と言えるかもしれない。エンタメでもなく純文学でもなく…。

 「その純文学とかエンターテインメントとかの分類ってやめた方がいいと思ってるんです。日本には芥川賞、直木賞もあって、役割は果たしているけど、国際的インパクトを与えられないでいる感じがするんです。イギリスのブッカー賞はとても自由だし。日本にもブッカー賞みたいなものがあればいいんですけど」

 ■意外とアンチエージング

 世界文学を好む読書家でもあり、日本の小説界にも注文はある。さらに、脳科学者が小説を書くことに違和感を覚える人もいるらしい。

 「いまはこれまでの枠組みがなくなってきている時代です。だから日本を良い方向に向けるには、幕末にあったような“ええじゃないか”騒動みたいに、なにをやっても“ええじゃないか”なんです。脳科学者が小説を書いても“ええじゃないか”。だから夕刊フジの読者にも呼びかけたいですよ。おっさんが集まって音楽のアルバムを作ったって良いし、小説を書いても良い。小説を書くのは意外とアンチエージングになってる気がします。この2作を書くだけで脳がかなり成長しましたよ」

 50半ばの“頭脳”がさらに成長とは-。

 「でも、今回、小説の書き方が分かったというのが大きかったですね。本作で初めて純然たるフィクションを書いた感じがするんです。あ、書けるなって感じがしました。小説の構想で、無意識にこういうことが書きたいんだと思っていることが、ストーリーに落とし込めているかどうかが鍵です。無意識との対話というか。今、小説見習い修行中という感じがしますね。これは科学者が論文を書くのと全く違う世界で面白い」

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