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【ぴいぷる】小窓の中に広がる摩訶不思議“パノラマ島” 箱庭アーティスト・安田誠一さん「理想のテーマパーク作るのが夢だった」 (1/2ページ)

 ■江戸川乱歩に影響

 優雅に小舟が行き交うベネチアの運河、勇壮なカナディアンロッキーの雪景色、常夏の楽園モルディブの環礁…。

 世界の絶景が、小さな木箱の中に奥行きある立体的な風景として再現。小窓からのぞくと、パノラマの“極小世界”が目の前に鮮やかに広がる。

 「多くの人に“小さな世界旅行”を気軽に楽しんでもらえたら」と、日本を代表する箱庭アーティストは期待を込める。芸術家と呼ばれるが、家具職人だった意地も込め、屋号は「箱庭屋」だ。

 こんなに手の込んだ箱庭世界を再現できる芸術家は国内でただ一人。世界にも類はないだろう。

 小窓の中に広がる独創的な世界は、リアルな都市の再現でありながら、巨大なテーマパークを両手でつかめるスケールに閉じ込めたような摩訶不思議な空間だ。

 「小学生の頃に読んだ江戸川乱歩の小説『パノラマ島奇談』に出てくる理想郷の島の世界観に影響を受けています」と語る言葉に納得がいく。

 主人公が巨額を投じ、無人島に理想郷を築き上げる乱歩のファンタジーの世界観とが重なり合う。

 幼いころから物づくりが好きで、模型製作や絵画が得意だった。大学卒業後、遊園地で働いた。

 「理想のテーマパークを自分の手で作るのが夢だったんです」と語るように、就職の理由も大好きな乱歩の影響だった。

 遊園地は憧れの職場。施設運営から、壊れた遊具を直すなど園内の仕事は何でもしたという。

 仕事には満足していたが、1995年、突然、退職を決意する。

 ■個展オファー殺到

 きっかけは阪神大震災。園内の施設が損壊し休園の事態に陥った。

 「すべてがゼロになる状況を目の当たりにし、何かを残す仕事がしたい」と思い立ち、退職後、職業訓練校に通い、木工細工の技術を身につけ、家具製作の会社に就職する。

 家具職人としての人生が軌道に乗り始めた頃、再び転機が訪れる。

 「息子の幼稚園で親子で一緒に工作するイベントが開かれたんです」

 父母らが持ち寄った空き箱や紙、木材の廃材などを使い、1時間ほどかけて即興で工作物を完成させるイベントだった。

 すぐにアイデアが頭の中に浮かんだ。紙製の皿の空き箱の中にベネチアの運河をミニチュアで作り、箱の側面に開けた穴からのぞくと、立体的に見える仕掛けを作った。

 この空き箱で再現した“箱庭”が大反響を巻き起こす。子供だけでなく、父母や保母ら大人までもが列を作り、夢中になって小窓をのぞき込んでいた。

 「みんなの笑顔を見ていて決意が固まりました。私が作りたかったのは、この箱庭世界だったのだと気づいたんです」

 さっそく、世界5都市の風景を再現した5つの小箱を、木製の岡持ちの中に収めた作品「箱世界」を完成させた。

 「岡持ちによる極小世界の出前」をイメージした同作は、2007年のハンズ大賞で準グランプリを獲得。美術界で評判となり、全国の画廊などから個展の依頼が相次ぐ。

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