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【ぴいぷる】作家・綿矢りさ 芥川賞から15年、書けないスランプ…たどり着いた「生のまま」 (1/2ページ)

 チャーミングな人だ。茶色っぽい長い髪に大きなイヤリング。大胆に肩を出した黒のノースリーブ。オシャレな姿は、デビュー当時から変わらない愛らしいルックスとあいまって、30代半ばになったとは思えない。はんなりとした関西弁が柔らかみを加えている。

 「なかなか関西弁が抜けませんよね。(標準語は)イントネーションが難しいでしょう」

 京都に生まれ、早稲田大学進学時に上京。作家となってからは関東と関西を行ったり来たり。今は結婚、出産を経験し、子育てに追われるようになって生活も変わった。

 「(小説を)書く時間は、子供を保育園に預けたり、夜に寝かしつけたときしかなくなった。家事もあります。だから時間が貴重だと思えるようになったし、(家族と過ごす時間が)いい気分転換にもなりますよ」

 15年前、史上最年少の19歳で芥川賞を受賞した。受賞作はベストセラーとなり、同時受賞の金原ひとみ(当時20歳)とともにメディアの脚光を浴び、一躍、文壇のシンデレラに。

 ところが、下積み経験がまったくないままのデビューは、やがてプレッシャーとなってのし掛かる。書かなきゃ、と思って夜に執筆すると、昼間の講義は眠たくてしかたがない。昼夜逆転の生活が続き、もうふらふら。勉強も仕事も恋愛もうまくいかなくなった。

 「すべてに元気がない。太陽を浴びないような生活だから当然ですよね」

 書けないスランプは大学卒業後4、5年間も続く。

 「書いてもボツになったり、話がまとまらない。インタビューなどでは『違うジャンルの作品にチャレンジされるのですか?』なんて聞かれるから、そのうちに何が書きたいのか、自分でも分からなくなって…」

 吹っ切れたのは、「読者を『感動させよう』と“狙う”のではなく、自分が書けるもの、自分が面白いと思ったものを書くしかない。それで読者に楽しんでもらえるようになればいい」と思えるようになったからだ。

 そして6月末、ずっと「書きたかった」テーマの新作を上梓できた。

 大人の女性同士の狂おしい恋愛を描き、話題沸騰の『生(き)のみ生(き)のままで』(集英社)である。

 過激なセクシー描写や女性同士の隠微なムードを期待した向きには、少しアテが外れるかもしれない。若い2人の女性が真摯に相手に向き合う「美しい恋愛物語」というべきか。

 きっかけとなった作品がある。20代で書いた『ひらいて』(2012年)。主人公の女子高生は、好きな男性を振り向かせる目的で、交際相手の女性に近づき、“関係”を持つ。

 「このときは高校生同士の恋愛でしたし、そもそもの目的が“さや当て”。いつか、大人の女性同士の恋愛を、もっと深めて書いてみたいと思うようになったのです」

 ■作品には「少しずつ、私が投影されている」

 タイトル(『生のみ生のままで』)は、自身で考えた。「むき身」「ありのままの姿で」「真正面から向き合う」という思いが込められている。2人の女性は美しく魅力的だ。ともに男性の恋人がおり、同性愛の性向があったわけではない。「好きになった人」「出会ってしまった」のが女性だったのだ。

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