【心理カウンセラー舟木彩乃が読み解く コロナと不安】手洗いや消毒が止められない「強迫性障害」 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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【心理カウンセラー舟木彩乃が読み解く コロナと不安】手洗いや消毒が止められない「強迫性障害」

 ★20代女性ネイリスト、施術中に感染不安で離席

 日常生活で心配事が頭に浮かぶのは、誰しもよくあることだ。家を出たあと「鍵をかけたかな?」と心配になってもう一度確認しに戻る、このような経験がある人は多いだろう。しかし、何度確認しても確信が持てず、ばかばかしいと分かっていても不安が募って確認行為が止められないような場合は「強迫行為」ととらえる必要が出てくる。最近、コロナ感染に対する恐怖がきっかけで手洗いや消毒が止められなくなったという相談が増えている。

 ネイリストのAさん(20代後半、女性)が勤務するネイルサロンは都内にあり、緊急事態宣言時は休業していた。解除後は、交代制勤務、マスク着用、各所にアルコール消毒液設置、お客さまとの間にアクリル板を置くなどの対策をして営業している。ところが、Aさんは感染が再び増加する局面になって、そのような対策では足りないと“不安”になってきた。

 不安が異常なほどになったのは、第2波到来が現実味を帯びてきた7月中旬である。

 その頃のAさんは、お客さまの爪や手を30分ほど触っていると、ウイルスが自分の手に浸透してくる感覚に陥っていた。ネイル施術は90分から120分ほどかかるのだが、彼女は60分ほどすると我慢できなくなった。離席して10分以上手洗いやうがいをし、数分かけてアルコール消毒液を手に塗り込んでから戻っていた。

 やがて、席を立つ間隔が30分になり、洗っても洗っても自分の手にウイルスが付いている感覚が抜けず、手洗いや消毒に20分以上かけるようになり、手荒れも酷くなった。

 ついには、お客さまからクレームが入り、上司からも注意を受けたが、Aさんは自分のやっていることが“大げさ”だと分かっていても、止められなくなっていたそうだ。

 念入りな手洗いや消毒は、感染が拡大している中では、ごく自然なことだといえる。しかし、何度手を洗っても不安が打ち消せず、過剰反応だと思いながら繰り返すのは「強迫行為」と言われ、「強迫性障害」の可能性を考える必要がある。また、強迫行為を繰り返す人は、周囲の人に自分と同じ行為を強要することもある。

 手洗いなどが強迫行為になっている人は、周りのものが不潔に感じられ、ウイルスが手に付いているのではと不安で仕方がなく、どんなに洗ってもウイルスがなくなったと思えない。

 周囲が無理に制止しようとしても止められないばかりか、かえって悪化することもある。もっとも避けたい対応は「いいかげんにして」などと言って無理やり止めさせることだといわれている。

 精神科や心療内科で治療を受けると改善することが多いが、放置しているとエスカレートし、うつ病などを併発することがある。

 もし、あなたがAさんのようになっていたら、苦痛の程度や、度を超した行為で社会生活に影響が出ているかどうかを目安に受診すると良い。また、身近にそういう人がいて対応に困る場合には、一緒に考えようという姿勢で信頼関係を築き、受診につなげられると良いだろう。

 ■舟木彩乃(ふなき・あやの) ストレス・マネジメント研究者。心理カウンセラー。ヒューマン・ケア科学博士・株式会社メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー企業)副社長。筑波大学大学院博士課程修了。カウンセラーとして8000人以上の相談に対応。国家資格として精神保健福祉士や公認心理師、キャリアコンサルタントなどを保有。著書に『首尾一貫感覚で心を強くする』(小学館新書)。

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