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どんどん圧力強める中国の「香港の国歌条例案」 返還協定を形骸化…英国も腰砕け

 香港政府は9日、中国の国歌「義勇軍行進曲」に対する侮辱行為を禁止する国歌条例案を公表した。中国に批判的な香港市民の間で、サッカー香港代表の試合前の国歌斉唱を拒否したり、公共の場所で替え歌を歌うなどの行動があり、これらの行為に最高で禁錮3年、罰金5万香港ドル(約70万円)の罰則を設けるというもの。

 中国は一昨年11月、国会に相当する全国人民代表大会で「義勇軍行進曲」を侮辱する行為に対し、3年の禁錮刑を科す改正刑法を可決している。これを香港にも適用した。民主派は「国歌の押しつけだ」と反発を強めている。

 英国と中国が締結した香港返還協定には「国歌は『義勇軍行進曲』である」とは書かれていない。それどころか、香港返還の合意文書には「英国は1997年7月1日、香港を中国に返還し、中国は香港に対する主権行使を回復する」とあるものの、「香港を特別行政区とする」「高度の自治権を享受」「行政権、立法権、独立した司法権と終審裁判権が与えられる」「香港政府は現地人によって構成、行政長官は現地で選出、中央政府が任命」「現行の社会・経済制度、生活様式を維持」「国際金融センターの地位を保持し、香港ドルも使用」などとし、「これらの政策は50年間変更しない」となっていた。

 つまり、2047年まで民主的政策は維持されるはずだった。しかし、中国政府はこれを守らずに、どんどん圧力を強めている。高度な自治を認めると定めた「1国2制度」についても、中国は「2制度」よりも「1国」のほうを強調し、「1国の許す範囲で、自由は少しだけ目こぼしする」と解釈して、さまざまなことを形骸化させた。

 香港の若者たちが行政長官選挙制度の民主化を要求した14年の大規模デモ「雨傘運動」が香港警察に強制撤去されて以降、民主運動をやっていた人たちは議会選挙にも立候補できなくなった。

 さらに、中国政府を批判する人は、中国を旅行している間に身柄を拘束された。中国共産党に批判的な書籍を扱っていた書店の関係者らが突然行方不明になる事件もあった。民主社会ではありえない弾圧が雨傘運動後、相次ぎ起きた。そして今回、中国国歌を歌わないと罪に問われることになった。

 ただ、香港市民へのアイデンティティー認識調査では、自分たちを「香港人」と思っている人たちが圧倒的に多く、以下、「中国にいる香港人」「香港にいる中国人」となって、「中国人」と思っている人は非常に少ない。

 昨年暮れに香港大学が実施した意識調査でも、自分を「中国人」と認識している人の割合がこの4年間で最低水準となった。「自分は『中国人』とは一線を画す『香港人』だ」と考える人が増えてきている。

 本来なら、そういった声を背景に、英国が「けしからん。条約違反だ」と強く言わなきゃいけないところだが、「私たちもEU(欧州連合)から脱退するかどうかで忙しいので」という状況。腰砕けになっている。これでは50年間は現状担保、と記した返還条約にサインした元盟主に何の期待もできない。

 ■ビジネス・ブレークスルー(スカパー!557チャンネル)の番組「大前研一ライブ」から抜粋。

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