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「もう、諦めるしかない」 中高年化する就職氷河期世代を追い込む“負の連鎖” (1/2ページ)

 生活保護に必要な追加支出は20兆円程度--。

 これは今から11年前の2008年に、NIRA総合研究開発機構が報告書「就職氷河期世代のきわどさ」の中で、「氷河期世代がこのまま高齢化すると……」という前置きで示した数字です。

 当時、就職氷河期に増加した非正規雇用者は、100万人を上回る規模で残存していました。低賃金かつ不安定。十分な年金が確保されない非正規雇用の人たちが高齢化すると、生活保護受給者が増えることが予想され、「20兆円程度の追加的な財政負担」が発生するという試算結果を提示したのです。

 たまたま「就職時の景気が悪かった」というだけで非正規雇用になった氷河期世代は、既に40代に突入。彼らを救い出す実効性ある政策は行われないまま、“放置”され続けてきました。

 そんな中、安倍晋三首相は3月、「社会がつくった氷河期世代」の支援に、国を挙げて取り組むことを指示。「わが国の成長・発展を支える原動力は人だ。人的資本の形成・蓄積を加速するとともに、人材を有効に活用していくことが重要。本年の骨太方針に位置付けてほしい」と述べたと報道されましたが、本気で「社会がつくった氷河期世代」の不遇さを改善してくれるのでしょうか。甚だ疑問です。

 もちろん何もしないより「まし」かもしれません。

 しかしながら、厚生労働省が17年度からスタートさせた「就職氷河期世代の人たちを正社員として雇った企業に対する助成制度」の利用率はわずか「1割未満」です。17年度は、約5億3000万円の予算のうち、利用されたのは765万円(27件)。18年度は10億7000万円に予算を倍増したにもかかわらず、12月末までで1億2800万円(453件)。惨憺(さんたん)たる結果です。

■「非正規の賃金は正社員より高い」のが当然

 そもそもこの助成制度は、「過去10年間で5回以上の失業や転職を経験した35歳以上」が対象で、「現在無職の人や非正規社員を正社員として採用した企業」に対し、中小企業で1人当たり年間60万円、大企業で同50万円を支給するというもの。「過去10年間で5回以上……」と制限した時点で絵に描いた餅と言わざるを得ません。

 あまりの利用者の少なさに本年度から条件を緩和し、「正社員として雇用された期間が通算1年以下」に変更されましたが、これではいったい誰のための助成金なのか、ますます分かりません。

 申し訳ないけど、私には「『正社員』というニンジンをぶら下げ、過酷な労働条件を押し付ける“ブラック企業”優遇策」としか思えない。もし、本気で「わが国の成長・発展を支える原動力は人だ」(by 安倍首相)と考えるのであれば、正社員化を進めるより、「非正規の賃金を正社員より高く」すればいい。ただ、それだけ。そこを確実に進めることが、いちばん効果があるに違いありません。

 そもそも日本では「非正規社員の賃金は正社員よりも低くて当たり前」などという常識がまかり通っていますが、欧州諸国では「非正規社員の賃金は正社員よりも高くて当たり前」が常識です。

 フランスでは派遣労働者や有期労働者は、「企業が必要な時だけ雇用できる」というメリットを企業に与えているとの認識から、非正規雇用には不安定雇用手当があり、正社員より1割程度高い賃金が支払われています。イタリア、デンマーク、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどでも、非正規労働者の賃金の方が正社員よりも高く設定されています。

ITmedia ビジネスオンライン

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