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《zak女の雄叫び お題は「平成」》ボーダーレス化…時代と共に変化する特殊詐欺

 「ネガティブにならない!」「しっかり集中する!」

 自らを鼓舞するような言葉が、びっしりと並んだ壁の張り紙-。まるで受験を目前に控えた学生の勉強部屋のようだが、これが犯罪組織の「アジト」というのだから、驚きだ。

 先月、タイ中部パタヤで、振り込め詐欺など、特殊詐欺の電話をかける「かけ子」とみられる日本人15人が、不法就労の疑いでタイ警察に逮捕された。アジトとみられる一軒家では15人が共同生活をしながら、日本に詐欺の電話をかけていたといい、冒頭のような張り紙をした室内の様子が新聞やテレビで大きく報道された。

 なぜ、タイなのか-。背景には、国内のアジトの摘発強化があるという。

 かけ子が集まり、だましの電話をかけるアジトには携帯電話やマニュアル、名簿など、詐欺のノウハウやツールが集中している。警察に踏み込まれれば詐欺グループにとってもダメージが大きいため、より安全に作業できる環境として、海外に目をつけたというわけだ。インターネット回線などを利用し、安価な料金で通話できるIP電話の普及も、拠点の海外シフトを容易にしているという。

 平成を象徴する犯罪の1つとも言える、振り込め詐欺。警察の取り締まりを受け、犯罪グループが手口を変遷させる「いたちごっこ」の中で、その呼び名も変化してきた。

 被害が出初めたのは15年ごろ。当初は息子をかたる手口などから「オレオレ詐欺」などと呼ばれたが、その後に「架空請求詐欺」や「融資保証金詐欺」などの派生型が登場し、警察庁が16年に振り込め詐欺と総称した。

 ところが、金融機関が警戒を強めたことなどにより、犯罪グループは相手を待ち合わせ場所に呼び出したり、自宅を訪問して手渡しで現金を受け取る手口にシフト。「振り込め」も実態にそぐわなくなったことから、25年には警視庁が公募で選ばれた「母さん助けて詐欺」「ニセ電話詐欺」「親心利用詐欺」などの新名称を発表し、キャンペーンなどで活用した。

 振り込め詐欺など特殊詐欺の被害額は26年、全国で565億5000万円と過去最多を記録した。

 振り込め詐欺は国内だけでなく、中国や韓国などのアジア、欧米などでも被害が確認されているといい、国境を越えた犯罪になりつつある。タイで逮捕された日本人詐欺グループと“逆”の構図で先日、日本に拠点を置く台湾籍の詐欺グループの男女10人が警視庁に逮捕されたことも話題となった。10人は、山梨や千葉の一軒家に滞在し、中国に詐欺の電話をかけていたとみられる。

 「国際電話詐欺」「ボーダーレス詐欺」…。新たな時代にこうした言葉が生まれてくるかどうかは分からないが、国際化、巧妙化する犯罪に警戒を強めていきたい。(い)

【zak女の雄叫び】取材や日常…。女性記者21人が月ごとのキーワードで本音を綴るリレーコラムです。4月のお題は「平成」です。

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