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《zak女の雄叫び お題は「無題」》「バナナ」がもたらした贈り物 人に迷惑をかけるなではなく、助けを求められたらしてあげられる人に (1/2ページ)

 北海道の赴任生活は約3年半でこの5月、終わった。そんな中、北海道赴任の贈り物、と思えるような出来事が最近、あった。

 5月中旬、都内で開かれた日本筋ジストロフィー協会全国大会に北海道出身の俳優、大泉洋さんが参加してくださったのだ。昨年末に公開された、北海道在住の筋ジストロフィー患者、鹿野靖明さん=平成14年、42歳で死去=の自立生活を笑いと涙で描いた「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」に大泉さんが主演していたことがきっかけだった。

 北海道つながりということで自らも患者であり協会の理事をしている方から手紙を託された。記者と筋ジス協会のつながりは20年を超える。取材がきっかけだったが今は取材を超えてかかわってきた。手紙には彼がいかに映画を見て感動したのか、患者、家族を勇気づけてほしいという思いがせつせつと書かれていた。

 しかし、実現が難しいことは容易に想像がついた。映画の公開は終了している。相手は飛ぶ鳥を落とす勢いの売れっ子の俳優だ。悩んだ末、時々に訪れていたバーで知り合った飲み友達の女性に相談してみた。音楽、芸能アートに造詣が深い彼女ならつながりがあるのではないかと思ったからだった。

 北海道で大泉さんと関係が深い女性をさらに紹介してもらい手紙を託すことにした。読んでもらえるかどうかはわからない。駄目もとだった。大泉さんのメッセージか何かいただけるだけでも患者、家族の方が喜んでくださるのではないかという思いだった。協会には「やれることはした。期待はしないで」と報告した。

 ところがだ。スケジュールが許せば参加したいという回答をぎりぎりにはなったがもらうことができた。

 ご本人だけではなく、監督の前田哲氏も出演するという。ただ情報解禁は完全統制され、参加は会員が対象で、告知もホームページ上数時間のみ。取材は不可だった。

 当日、大泉さん、前田さんが時間通りに来られた。会報の記事をつくるつもりで臨んだところ、急きょ司会だけではなく舞台の上で2人の進行をすることに。降ってわいた役回り。もちろん初めてのことだ。緊張感の中スタートしたが、2人の話術のおかげで大爆笑の楽しいトークショーとなった。なにより、大泉さんのお話が心に響いた。

 「7歳の娘に他人に迷惑をかけてはいけないと言ってきたが人に迷惑をかけないということがそこまで大事なことかしらと思うようになった。自分にできないことを人にお願いしてやってもらうのは悪いことではない。それよりも、人から助けを求められたときにどうぞと、してあげられる人であってほしいと思うようになった」という。

 タイトルの「こんな夜中にバナナかよ」の原作は、介助がないと生きていけないが病院を飛び出した鹿野さんとボランティアとの生活を描いたルポだ。バナナを夜中に欲しいと言い出した鹿野さんにバナナを買いにいかされたボランティア。戻ってきたら「もう1本」とさらに買い求めに行かされる。

 「これまで障害を持つ人がわがままをいうイメージはなかった。バナナぐらい我慢しろよ、と思ったが僕たちはどんな時間に起きてもバナナを食べられるが、鹿野さんは食べられない。動けないなら我慢したらいいという発想がどこかあった」と大泉さんは振り返った。

 面白いのは、患者らが「車イスで登場するかと思った。私の車イス、貸してあげますよ」と大泉さんに話しかけたこと。大泉さんが目を丸くして驚いていたが、健常者が撮影を離れて患者の前で車いすで登場するのは失礼にあたる、と思うのはあたりまえだろう。しかし患者の側からすれば違った。

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