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【令和日本と世界】米朝会談“サプライズ”提案はトランプ流ビジネス交渉術 金正恩氏に迷う余地与えず 韓国・文氏は“好都合な大統領”

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 大阪でのG20(20カ国・地域)首脳会合は、大成功のうちに終わった。ドイツとアルゼンチンでの前2回のG20が惨憺(さんたん)たる結果に終わり、世界主要国の亀裂を見せつけた後だけに、「対立から未来志向の協力」へ流れを変えられたのは、想定し得る範囲で最高の成果だった。

 米中の通商交渉再開も、ドナルド・トランプ米大統領が南北軍事境界線がある板門店(パンムンジョム)で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と歴史的な会談ができたのも、G20での良いムードがあればこそ実現したものだ。

 トランプ氏が、正恩氏との会談を突然に思いついたかどうかは不明だ。米紙ワシントン・ポスト(電子版)は6月23日、一部専門家の見方として「トランプ氏が訪韓時に、正恩氏との会談調整を試みようとしているのかもしれない」と報じている。

 ただ、ツイッターでの提案が、正恩氏にとってはサプライズだったのは間違いない。

 ベトナムの首都ハノイでの米朝首脳会談決裂以来、正恩氏は国内で苦境に陥っていた。それを救い出す必要があったが、通常の交渉をすると、北朝鮮はあれやこれや策を弄してくる。だからこそ、迷う余地のないかたちで提案することは、ビジネスマンならではの賢明な交渉術であった。

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領も、まったく知らされていなかったようである。何とか、トランプ氏の訪韓前に南北首脳会談を開いて、メッセンジャーをしたがったが、北朝鮮から「仲介役でもないのに、口を挟むな!」と罵られただけだった。

 しかし、文氏は米朝対話においては好都合な大統領だ。

 北朝鮮の利益を図るために行動するだけだから、独自の立場がないし、メンツを立ててもらうことにも拘泥しない。今回もトランプ氏が軍事境界線を越えるときにも姿を現さず、正恩氏と一緒に戻ってきたときにあいさつに現れたが、米朝首脳会談にも同席させてもらえなかったようだ。

 5月のトランプ訪日時には、安倍晋三首相とのゴルフに駐日米国大使が参加を希望したがかなわなかったことが報道された。それと同じで、「北朝鮮のソウル駐在大使」的な自分の立場をよくわきまえて、邪魔しない好都合なキャラクターだ。

 これから米朝の実務者協議が再開され、いい雰囲気になれば、正恩氏をワシントンへ招待したいというような提案もあったようだ。中国の習近平国家主席と同様、北朝鮮の独裁者といえども、トランプ氏を相手にしては掌で踊るしかないのである。

 そして、そのトランプ氏の「最も信頼する友人」としての安倍首相の立場の強さも際だったものである。

 日本は、北朝鮮との交渉で焦ることはない。北朝鮮再建のための経済協力は、拉致問題の全面解決などで日本が納得しなければ、払わねばいいだけのことなのである。

 ■八幡和郎(やわた・かずお) 1951年、滋賀県生まれ。東大法学部卒業後、通産省入省。フランス国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任し、退官。作家、評論家として新聞やテレビで活躍。徳島文理大学教授。著書に『捏造だらけの韓国史』(ワニブックス)、『令和日本史記-126代の天皇と日本人の歩み-』(同)など多数。

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