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香港デモ、中国共産党“静観”のウラ 新たな地方トラブルの発展警戒か

 香港のデモが激化し、日本の報道は下火になったが、その本質のところで根深い問題を抱えている反中国の動きは、当面収まる気配はない。

 日々強まる“中国化”への反発という視点なら報道はあふれている。だからここでは少し変わった視点からこの問題にアプローチしてみたい。

 まず中国共産党が意外に静かなことだ。

 若者が中心となり香港政府の進める「逃亡犯条例」改正案の撤回を求める動きが明らかになった直後の6月14日付の共産党機関紙、『人民日報(海外版)』が、このデモ参加者を「香港の前途を破壊する暴徒」と非難して以降、おおむね静かだ。

 理由はいくつか考えられる。

 まず中国にとって、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする条例改正など、それほど必要ではない点だ。そんな条例がなくとも、連れてゆきたい人間は連れてゆくことは、前例が示している通りだ。

 次に、この問題はすでに「香港の民主」という枠を超えた国際的な駆け引きの材料となったという点だ。

 中国外務省の耿爽副報道局長の指摘する、「香港内政への干渉を試みる黒幕」の動きが、その一端である。

 前回の「雨傘革命」が少なからず台湾の活動家の影響--台湾の「ひまわり学運」の活動家が香港に入り学生たちと接触していたことはメディアでも報じられている--を受けていて、その後ろにアメリカがいることを前提とした発言だ。

 こんな言い方をすると中国の陰謀史観かと笑い飛ばしたくなるが、実際、2014年にはハドソン研究所の上級研究員・マイケル・ピルズベリー(Michael Pillsbury)が米フォックス・ニュース(Fox News)のインタビューで、「(中国の言い分は)まったくの間違いではない」という表現ながら、香港の政治問題にアメリカが影響を与えている事実を認めている。

 各地の民主主義を保証するための資金、NED(national endowment for democracy)を通じた資金も提供されていることにも言及しているのだ。

 香港のデモが起こったことで、劣勢だった台湾の蔡英文総統の再選にも曙光(しょこう)が差し始めたように、ファンタジーだけで終わらないのが香港の問題だ。

 中国は、この問題で変に強行に出れば台湾独立派を利するだけでなく、トランプ政権と対極に立ち、多国間主義を打ち出してつくりだしたソフト路線にも傷がつきかねない。だからこそ、慎重に対応しているのだ。

 だが、なかでも注目すべきは、香港が新たな地方トラブルの最右翼になることへの警戒だ。

 香港の人々が「逃亡犯条例」に反応したのは、条例への恐怖よりも、象徴的な意味が大きい。言い換えれば累積した中国への不満というガスに引火させた最後の火花ということだ。

 裏側にあるのは香港の地盤沈下である。

 この先、香港の光はどこにあるのか。存在意義が問われていることを皆知っている。そして経済的基盤はさらに中国へと依存せざるを得ない。そのフラストレーションに対する反発であり、中国はいずれ香港に補助金を出すことを視野に入れなければならないかもしれないのだ。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

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