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絶滅危惧のウナギ 横行する“密漁・密輸”がもたらす「希望なき未来」 (1/3ページ)

 今年も「土用の丑の日」が7月27日にやってくる--。

 昨年、日本はかつてないほど、ウナギ稚魚(シラスウナギ)の不漁に見舞われた。水産庁の調べによると1963年に232トンを記録していたシラスウナギの採捕量は年を追って減少、2017年漁期には15.5トン、18年漁期には8.9トンにまで落ち込んだ。13年に環境省はニホンウナギを絶滅危惧種に指定、翌年には国際NGOの世界自然保護連合(IUCN)も絶滅危惧種に指定している。昨年の不漁の問題については、ちょうど一年前にレポートした通りだ(ウナギ業界の「異常」にイオン、岡山のベンチャーが立ち向かう理由)。

 報道の面でも昨年、「うなぎ絶滅キャンペーン」なるツイッターのアカウントが登場、「うなぎを安く食べ尽くそう」という皮肉を込めた呟きに1万人以上のフォロワーがつき、NHKも含め一般メディアが広く報じた 。最近も「(ウナギを)大事にいただきましょう」という環境省公式ツイッターでの投稿が「炎上」、僅か数時間で投稿が削除されるなど、ネット上でも話題に事欠かない。

 ネット上での話題もさることながら、現実世界でも、今年の状況は去年をはるかに凌ぎ、採捕量はわずか3.7トンの過去最悪を更新した。これは1963年の1.6%にすぎない。「クロコ」と呼ばれるシラスウナギが成長して黒色になった幼魚が含まれている可能性がないとされる72年以降で採捕量が最大だった75年の96トンと比較しても、今漁期の採捕量はその3.8%にすぎない。尋常ではない減り方である。

 天然ウナギの内水面での漁獲量も3000トン前後を推移していた1960年代に比べ、2018年には68トンにまで落ち込んでいる。最盛期の1961年(3387トン)比でわずか2%である(図1参照)。

 シラスウナギ採捕数の減少は価格にも反映される。水産庁の調べによると、2003年にはキロ当たり16万円であったシラスウナギの取引価格は、今年は219万円にまで上昇した。現在の金取引価格がグラム当たり約5300円であることから、1キロのシラスウナギを持ってゆけば約410グラムもの金が買えることになる。こうした稚魚の高騰は、当然スーパーに並ぶウナギ蒲焼の価格にも反映されることになるだろう。

 ◆「完全養殖ウナギ」の稚魚は1匹5400円 量産化には程遠い

 現在ウナギの養殖は天然の稚魚に頼る以外にはなく、われわれが食べるウナギは全て天然のシラスウナギから成長したものだが、完全養殖のための取り組みも進められてきている。02年に独立行政法人水産総合研究センターは、卵からシラスウナギまでの人工飼育に世界で初めて成功、10年には人工の親魚から得た卵をふ化させた「完全養殖」に成功している。

 16年には計画的な産卵と年間数千尾のシラスウナギ生産が可能となり、水産総合・研究センターの後継機関である国立研究開発法人水産研究・教育機構は19年6月、人工的にふ化したシラスウナギを使って養殖したウナギの試食会を水産庁で開催している。しかし、現在の技術で生産した場合、シラスウナギは1尾5400円と、コストは天然ものの10倍以上になるのが現状だ(みなと新聞 19年6月25日)。しかも人工のシラスウナギは天然物に比べて生存率や成長率に劣っている。量産化はまだ先のことと言えそうである。

 もし量産化が実現できたとしても、それだけではウナギの減少に直接歯止めを掛けられるわけではない。量産化が進み、天然物よりも安いシラスウナギが流通するようになれば、天然シラスウナギの価格は市場競争上、より安くなる可能性がある。安くなると、シラスウナギの採捕者が以前と同じ程度の利益を上げるためには、より多くの天然シラスウナギを獲らなければならなくなる。

 したがって持続可能なウナギ利用のためには、人工シラスウナギが量産化された場合であっても、十分に資源を保護できる水準のシラスウナギ採捕・池入れ上限の設定が必要になってくるだろう。

 ◆緩すぎる規制と「密漁・無報告ウナギ」の蔓延

 現在シラスウナギの採捕は基本的に各都府県レベルで規制されていて、漁期や採捕上限などの規制も都府県別だ。ただしウナギ養殖業は農林水産大臣の許可を要する指定養殖業に指定されていて、この許可に基づき国は合計21.7トンの池入れ割当量を設定、各都府県に配分している。

 問題なのは、その採捕上限などの規制が緩すぎる場合が少なくない点だ。例えば茨城県では17年漁期に1283キロ、18年漁期に1239キロのシラスウナギ採捕が県に報告されている 一方(日本養殖新聞 19年6月15日)、18年漁期の採捕上限はこれらを遥かに上回る6200キロに設定されている(みなと新聞 19年3月20日)。茨城県内に限れば6200キロものシラスウナギ需要はなく、枠は明らかに過大だ。

 加えて、一部の県ではそもそも採捕上限すら設定されていない。14年に定められた国全体の池入れ上限21.7トンは、同年漁期の池入れ量(27.1トン)を2割削減した数字だが、水産庁の資料によると、過去10年で池入れ量がこれを上回った年は2回しかない(図2参照)。そもそもこの池入れ上限の数字に科学的根拠はなく、資源保護のための役割を十分に果たしているとは言い難い。

ITmedia ビジネスオンライン

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