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香港デモ「『白シャツ集団』の裏に中国」は無理筋 見え隠れする地元マフィアの存在

 やっぱり、こういう話になってしまうのか、とため息の出る思いだ。

 香港の反「逃亡犯条例改正」デモでの新しい展開でのことだ。新たにメディアのキーワードとして持ち上がったのは「白シャツ集団」である。

 これは反「逃亡犯条例」のデモ隊が黒いシャツに身を包んだことに対抗して、親政府の運動を行った集団が白いシャツをまとったのがワードの由来だ。

 香港のデモについて、日本は当初、学生たちに同情的であった。

 習近平政権下で言論の自由度が狭められるなど変化を目の当たりにしてきたのだから当然の反応だろう。

 だがデモ隊の一部が香港の議会建物を破壊する映像が流れると潮目が変わったのか、明らかに距離が生まれた。

 そして7月21日夜、今度は香港北西部の元朗駅でデモ参加者らに襲い掛かる「白シャツ集団」の映像が流れると、香港の運動の複雑な一面がさらに色濃くなったのである。45人が負傷し、うち一人が重体だというから穏やかではない。

 ただ、この事件に対して早速日本の一部では「裏で中国が手を引いている」という解説が出回り始めていることには驚かされる。

 いったいどんな動機から、中国がわざわざ自分たちが不利になるような仕掛けをしなければならないのか。しかも若者たちが暴力的手段で議会に突入するというオウンゴールで、自分たちの立場が良くなったばかりという時期に……。

 襲撃が元朗というマイナーな駅で行われたことも、よくわからない。

 中国が仕掛けるのであれば、見えないところで締め上げるはずだ。学生であれば、まずは親や教師を通じたプレッシャーで、親には所属する会社や機関からの圧力だ。

 この問題では外国の目を気にしてきた中国が、せっかくトランプ米大統領からデモ対応を称賛された(22日)ばかりというタイミングで、自らの悪辣さを宣伝するようなことをするのか。

 香港のすべてのことをデモ参加者と中国共産党・香港政府という限られた登場人物で説明しようとすれば破綻するに決まっている。

 香港人のすべてが逃亡犯条例に対し明確な立場をもっているとは思えないが、たとえあったとしても他人を襲撃するほど強い気持ちがあるとは考えにくい。人間がそんなことをするのは「利益」のためでしかない。

 かつて同様にデモ隊が旺角周辺を占拠して地元の人々が商売できなくなるほどの混乱をもたらしたとき、地回りのやくざがデモ隊に襲いかかるということも起きた。それと酷似しているのではないか。

 というのも襲撃が起きる少し前には、デモのスローガンに「中国の水貨を追い出せ」というものも見られるようになっていた。

 水貨とは香港から大陸に荷物を担いで輸入される品物のことで、もともとは香港人が稼いでいたのだが、これを大陸の人々に奪われ、怒っていたからだ。

 しかし、この問題の裏側に、その裏で暴利をむさぼるマフィアの存在もある。場所といい、やり方といい、ピタリとくるのだ。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

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