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中国で流行する汚職官僚の「自首」 変化した「反腐敗」への反応

 中国共産党の党員の数が党中央組織部の統計で9059万4000人となり、正式に9000万人を突破した。

 中国共産党の発足時の党員は約50人--そもそもこの人数で政権を取ろうとしたことが大胆だが--で、建国時でも448万人であったことを考えれば、異常な膨張である。

 報道によれば、ここ数年、毎年平均で約390万人が入党申請を出しているという。

 一方で反腐敗キャンペーンによって党籍を失う幹部が多いことを考えれば、凄まじいスピートで党員が増加していることになる。

 このままの調子で党員が増え続ければ、いずれは成人のうち5人に1人が党員という状況ができても不思議ではない勢いなのだ。

 さて、そんな中国でいま、党員幹部の間で一つの顕著な流行が見られるという。流行といえば語弊があるだろうか。一つの傾向だ。

 週刊誌『中国新聞週刊』(2019年6月3日号)が、大々的に報じたもので、扱ったテーマは、汚職官僚の「出頭」である。

 同誌の報道は、5月19日、党中央規律検査委員会・国家監察委員会のホームページで劉士余事件の詳細が発表を受けたものであった。

 劉士余の事件は、中国では「主動投案」と呼ばれる。自主的に規律検査に応じた案件ということである。

 従来、規律検査委員会(規委)の下にある巡視組などの査察などで仕方なく双規(規律検査の実施)に応じてきた幹部たちが、ここにきて自ら出頭してくるケースが激増中だというのだ。

 公開されている規律検査情報だけを見ても、そのことは顕著だ。

 例えば、5月に限ってみても、元雲南省党委員会書記(=雲南書記)の秦光?にはじまり、元湖南省常寧市副書記の唐奇林、元広西省貴港市公安局副局長の黄倹、元雲南省城市建設投資集団有限公司党委員会書記(兼董事長)の許雷といった面々が、次々と自ら規律検査委員会・監察委員会に出頭してきていることが分かるのだ。

 これまでは自分の周囲の部下から腹心へと捜査の輪が縮まりながらも頑として“知らぬ存ぜぬ”に徹してきた幹部たちの姿とは明らかに違った反応といえるだろう。

 興味深いのは同じ5月19日、中規委はホームページで〈出頭こそ唯一の正しい選択である〉との文章も併載したことだ。そのなかで19大(17年秋の中国共産党第19期全国代表大会)以後、2万7000人の党幹部が自らポストを降り、5000人が自ら進んで罪を認めたと記している。

 実は、この傾向は18年には明らかになり始めたという。7月31日に元河北省政治協商会議副主席の規律違反案件で、当局は初めて「投案自首」という言葉を使っているのだ。

 ここから1か月に満たない間に、連続して7人が「自首投案」した。この動機は、周りが騒がしくなっても逃げ切れる可能性がゼロに近くなったからだという。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

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