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空港占拠、インフラ停止…香港デモはどこに向かっている? 「天安門」とは別の「見たくない結末」

 香港のデモは、いったいどこに向かって行こうとしているのか--。

 当初は、香港から中国への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反対する人々の抗議活動だったはずだ。

 しかし最近では、デモ隊が電車の扉に座り込んで長時間にわたり運行を妨げたり、空港を占拠して発着便に大きな乱れを及ぼすなど、無秩序ぶりが目立ってきている。

 当初、若者を中心に「中国化」が進む香港の未来への不安だと、理解していた日本の読者の多くも何となく「?」となってしまったのではないだろうか。

 そもそも香港の問題は「民主」か「非民主」かといった単純な話ではない。現在の変化は、これまで単純化された図式のなかでコメントを求められてきた筆者の違和感と、読者の間の違和感がやっと埋まったというところだ。

 香港で起きる問題--別に香港に限った話ではなく、国際問題全般にいえることだが--は、知れば知るほどわけが分からなくなるというのが「あるある」なのだ。

 そして目下の筆者の懸念は、香港はこれからどうするのか、というものだ。

 実のところ香港の人々が苛立っていた理由の一つは、中国人や中国マネーの侵入でさまざまな不自由を感じていたことにあった。蓄積した不満が「逃亡犯条例」という火花で爆発したのだ。故に筆者は香港の活動家とテレビで同席したとき、「勝利の目標をどこに置くのか」と尋ねたのだ。

 香港の人々は自分たちの生活が大陸の中国人に圧迫されていると感じると同時に、香港の未来にも不安を感じている。

 香港の繁栄を支えてきた金融センターとしての地位や大陸ビジネスの入り口としての役割が、どんどん大陸に移り低下してゆく未来に対してだ。

 そうしたなか空港を占拠したりインフラを止めれば、それは経済的な「リスク」としてとらえられ、香港離れを加速させてしまうのは間違いない。

 何のためにそんなことをやるのか。

 「NNA ASIA」によると、16日には〈抗議活動の一環として、「香港と中国の資産売却」を目的に、香港の銀行から預金を引き出して海外の口座に移すよう〉呼びかけたという。

 経済を人質にすれば、香港の地盤沈下は加速される。

 一方の中国はデモの背後にいるアメリカしか見えていない様子だ。SNSでデモ隊に指示を送っていたと疑われる外国人のスマホ画面の写真や外交関係者がデモのリーダーと面会している画像をリークしたり、全米民主主義基金(NED)からデモ隊への資金提供の事実を指摘するなど、もはや対デモではなく対アメリカ一色だ。

 こうなると犠牲になるのは香港である。

 飲み水も電気も自前で調達できない香港には、大陸に対抗するにしても限界がある。デモを安易に応援したところで、香港の独立を資金的にも応援できる国--頭の体操だが--などない。

 デモ隊を使って中国にダメージを与えられればその人物は本国で出世できるが、香港は泥沼だ。これも「天安門事件」とは別の意味で「見たくない結末」だ。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

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