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トランプ大統領「グリーンランド買収構想」の意味 北極海の戦略や地下資源に魅力…6兆円をはるかに上回る価値

 トランプ米大統領が、デンマーク領グリーンランドを買収する構想があることを明らかにしたことが話題になっている。

 グリーンランドは北極海と北大西洋の間にある世界最大の島だ。デンマークの一部(自治領)だが、独自の自治政府がある。

 人口は約5万6000人で、日本の最小人口県である鳥取県(約57万人)の約10分の1に相当する。面積は約217万平方キロと日本の約5・7倍だが、国内総生産(GDP)は約27億ドル(約2900億円)と鳥取県の6分の1だ。

 石油などの地下資源が豊富で、軍事戦略上重要な位置にあるのも特徴だ。かつてはデンマークの植民地支配を受けていたが、近年は高度な自治権を獲得しており、いずれ独立する方向だ。鍵を握るのはグリーンランドの天然資源であり、それが経済を支えられれば、完全独立となるだろう。

 トランプ大統領が注目したのは、グリーンランドの戦略上の位置と、手つかずの地下資源のようだ。これは荒唐無稽な構想ではない。トランプ氏以外の為政者も考えてきたことだ。

 北極海の戦略的意義はよく知られている。かつての北極は、米国と旧ソ連の戦略爆撃機が上空を飛び、潜水艦が氷海の下を潜行するなど両者が対峙(たいじ)する地域であった。

 最近では、温暖化により北極海の氷が解け、航路も開発されている。さらに、近年では、石油、天然ガスなどのエネルギー資源、ダイヤモンド、金、銅、ニッケルなどの鉱物開発、漁業資源なども北極海近辺で確認されており、未開のフロンティアになっている。

 ここに早くから目をつけていたのは、近接するロシアとカナダである。米国も遅ればせながら、ブッシュ政権以降、積極的な関与を掲げて、オバマ政権も踏襲した。

 グリーンランド島北部のチューレには、米国は第2次世界大戦後に空軍基地を設置しており、いまなお米軍が駐留している。中国も南シナ海、東シナ海で積極姿勢が目立っているが、北極海に対しても、着実に布石を打っている。2016年、中国はグリーンランドにある古い基地を買収しようとしていたが、米国の意向によりデンマークに阻止されたという経緯もある。

 グリーンランドは北極圏において大きな面積を占めていたので、古くは、1946年に当時のトルーマン大統領が1億ドルでの購入を提案したこともある。現在の貨幣価値に換算するとグリーンランドのGDPの半分程度しかない安値だ。

 不動産価値を算出するために用いられる収益還元法を便宜的に使っても、グリーンランドの時価は550億ドル(6兆円)をはるかに上回る。それに、戦略上の位置や地下資源を考慮すれば、値段はつけられない。

 トランプ氏は、買収を拒絶されたとしてデンマーク訪問を延期すると明らかにした。買収の実現可能性は乏しくとも、他国としのぎを削る北極海での勢力争いとグリーンランドの独立を見据えた、米国の長期戦略の一環だと考えるのが妥当だろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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