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遺族の行政手続き一カ所に集約「おくやみコーナー」誕生 「多死社会」背景に全国の自治体へ普及

 配偶者や親らが亡くなった後に遺族が行う行政手続きの負担を軽くしようと、全国の自治体で専用の案内窓口を設ける動きが広がっている。「おくやみコーナー」といった名称で、必要な手続きを一覧にして示したり、部署や階を移動せずに済むようにしたりしている。高齢化による「多死社会」。今後、役所のスタンダードとなりそうだ。

 「聞いていたよりずっと楽だった」。7月下旬、島根県出雲市役所。妻を数日前に亡くした土木作業員の男性(65)は、1階入り口付近に設けられたおくやみコーナーから出ると、付き添いの妹(60)と表情を緩ませた。

 男性は「葬儀のことだけでも手いっぱい。数年前に(死後の手続きで)市役所に来た人からは『とても大変』と聞いていた。書類には自分や妻の名前が事前に印字してあって、記入作業もすぐ終わった」と話した。

 利用者がコーナーを訪れると、最初に専任の職員が生前受けていた福祉サービスの種類などを聞き取り、必要書類や関係する課をリストアップ。必要な書類をまとめて印刷し手渡す。各課の職員が順番にコーナーを訪れるので、階を移動する手間はない。年金事務所に行く必要がある手続きについても、市の担当職員が説明する。

 男性は死亡届のほか、介護保険証や障害者手帳の返還など7種類の手続きが必要だった。本来なら4つの部署を回り、1時間ほどかかるが、30分足らずで終わった。

 市民課の勝部和世課長は「コーナーをつくるのに高額な予算は必要なかった。一手間掛けることで家族を亡くした遺族の負担が軽減されれば」と話す。

 おくやみコーナー設置の先駆けは、2016年に始めた大分県別府市。窓口の「たらい回し」による遺族の体力的、時間的な負担を減らそうと、若手職員が発案した。どんな手続きが必要なのか分かりにくいことや、何枚もの書類に同じ情報を手書きしなければならない点を改めた。

 評判が他の自治体に伝わり、三重県松阪市や神戸市、兵庫県三田市なども似たような窓口を設置した。

 日本の年間死者数は約136万人(18年)で、20年間で1・5倍近くに増えた。9割が65歳以上で、手続きをする遺族も高齢になっており、負担感は大きい。終活カウンセラー協会の武藤頼胡代表理事は、専用窓口のニーズは今後さらに高まると指摘した上で、「現状では、手続きのために何度も足を運ばなければいけない。改善が必要で、専用窓口は良い取り組みだ」と話している。

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