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リクナビの「内定辞退予測」問題 法令順守については論外も、有用性の合理的判断も必要

 就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、学生の内定辞退率を予測して無断で他社に販売したとして、厚生労働省から東京労働局を通じて行政指導を受けた。問題の背景は何か。ほかにも個人情報をもとにした問題のあるビジネスは出てくる、または出てきているのか。どのような考え方が必要なのか。

 今回の「リクナビ」の場合、学生本人の同意なしで、本人のパソコン内にあるCookie(クッキー)を利用して学生の内定辞退率を予測し、それを企業に販売していたようだ。

 クッキーとは、ウェブサイトにアクセスした際、そのサイトからユーザーのブラウザに送られてくるファイルであるが、そこにはユーザーID、メールアドレス、訪問回数などユーザーの情報が書き込まれている。それらを分析すれば、ある程度、本人の好みがわかる。今回の場合、ブラウザの履歴情報などから内定辞退率を予測したのだろう。

 クッキーを利用して、本人のショッピングの好みなどを分析し、それを活用して推奨商品のメールが送られてくるというのは既に行われている。

 最近、ウェブサイトにアクセスすると、クッキーの利用についてポップアップで警告が現れたり、同意が求められたりするケースが増えている。特に、欧州のサイトで目立つ。実は、2018年5月にEU一般データ保護規則(GDPR)が施行されたからで、クッキーは個人情報とされているため、ユーザーの同意を求めているのだ。

 このような実情から考えると、(1)内定辞退率予測のサービスをするにあたり学生本人の同意を得なかったというコンプライアンス(法令順守)(2)内定辞退率予測のサービス自体が就職市場においてそもそも不適切-という2つの問題を切り分けて考える必要がある。

 大学の就職関係者の中には、(1)と(2)を一緒にして今回の問題を非難する傾向が強い。人生の重要な場面なので、内定辞退率を算出することが不謹慎という主張だ。

 しかし、内定辞退率予測そのものは、学生の就職に不利益にしかならないのだろうか。

 採用企業から見て、最近の人手不足では、内定辞退は大きな関心がある。もし、企業からみて意中の学生の内定辞退率が高ければ引き留め工作に走るか、他の学生にも内定を出して歩留まりを確保するはずだ。もちろん個別のケースで例外はあるだろうが、内定辞退率が高いことは必ずしも学生の不利益にはならないのではないか。

 学生側の不安は、内定辞退率を採用に使っていたかどうかだが、優秀な人材ほど競合他社との引き抜き合いになるので、内定辞退率は高まる傾向がある。かといって、辞退率の予測で数値が高い人を不採用にしたら、有用な人材をみすみす逃すことになり、合理的ではない。

 リクナビの問題で、(2)ばかりを強調する人は情緒的との見方もできる。(1)の問題は論外だが、(2)のサービス自体が悪いわけでない。今後のビッグデータビジネスに禍根を残してはいけない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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