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日本の裁判は紀元前3000年!? 急務となる法律分野の“電子化”

 民事裁判のIT化を進める最高裁は、訴状や準備書面など裁判関係の書類のウェブ提出義務化を早ければ2021年度中にも導入する方針だという。これにより、訴訟の迅速化を目指す。

 最高裁は民事裁判で電子データの活用が進むよう、2018年度予算案に初めて約4900万円の調査費を盛り込んだ。20年度予算概算要求にもシステム構築費など約1億5000万円要求している。

 この裁判の電子化、日本ではまだまだ難しい状態だ。弁護士は裁判に大量の紙資料を持ち込み、裁判官はそれを読むだけでも相当な時間をかける。弁護士の中にはまだファクスでやり取りをしている人も多い。パソコンを動かすことのできない弁護士も結構いる。

 ただ、そういうベテランの人は、法廷闘争になると老かいなやり口で攻める。そういう意味でも、「電子化なんて、とんでもない話だ」となっている。日本は裁判の電子化については、いまだに紀元前3000年と言える。

 2002年、私は中国の大連でビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO=企業がコアビジネス以外の業務の一部を外部の専門業者に委託)の先駆けとなる会社(ジェネラル・サービシーズ)を設立し、日本語の入力業務を請け負う事業を現地のニューソフトと合弁で立ち上げた。

 その中で、当時まだ活版印刷物しかなかったいわゆる判例集60年分を電子化する作業も請け負ったが、日本語の場合、各判例、事例などを読んでいくだけでも大変だった。

 米国は1990年代から州ごとに裁判手続きを電子化している。大手情報企業のトムソン・ロイターは事例の検索だけでなく、弁護士成りたての人に対して、裁判で争うときにはどういう議論を組み立てたらいいのか、ということまで教える。

 また、シンガポールは2002年から訴状の電子申請を義務づけた。韓国は11年に全民事裁判のやり取りを電子化している。

 それに比べて、日本は裁判に必要な資料の電子化がはるかに遅れている。私もその一部に関わっただけに、最高裁が裁判書類のウェブ提出の導入について、よく思い切った方針にしたと思う。その割には要求している予算を見るとささやかなもので、せめてシンガポールや韓国には負けないぐらいになってほしいところだ。

 これに関連して、法律分野でITを活用するリーガルテック・サービスの会社が、事業の照準をこれまでの企業の法務部の法律事務処理から弁護士など個人に広げている、という記事が2日の日経新聞に載っていた。リーガルテックにより、法律に関わる仕事の効率化は進むだろう。

 法律相談サイト運営の「弁護士ドットコム」は15年に電子契約サービスを始め、このサービスで結ばれた累計契約件数は約50万件にのぼるという。行動情報データ解析の「フロンテオ」は国際訴訟における証拠の発見に役立つ人工知能エンジン「キビット」を開発した。

 また、米国「ドキュサイン」は電子署名とペーパーレスによるデジタル・ビジネスを世界180カ国以上で展開している。さらに、契約の管理や更新などあらゆる関連作業をひとまとめにする「アイサーティス」は企業価値が10億ドルを超えるユニコーンとなった。これらの企業には、ぜひ、日本でも法律分野の電子化のために頑張ってもらいたいと思う。

 ■ビジネス・ブレークスルー(BBTch)の番組「大前研一ライブ」から抜粋。

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