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【東日本大震災から8年半 忘れない、立ち止まらない】災害は、いつどこででも起こり得る 「次に来る災害」想定し、実践的訓練が必要

 台風15号が関東を直撃し、千葉などで大きな被害が出ている現在、何度目になったか知れない「災害は、いつどこででも起こり得る」という思いを新たにする。被害の渦中にある皆さまには心からお見舞い申し上げるとともに、少しでも早い復旧を願っています。

 そんな台風シーズン真っただ中の先月下旬、岩手県陸前高田市で初となる「災害応急対策訓練」が行われた。市職員が被災者や避難住民への対応、必要物資の手配や協定を結ぶ自治体への応援要請など、災害発生後72時間以内に行うべき業務と行動手順を確認するためのものである。

 住民による避難訓練など、定期的な訓練はどうしても「型通り」になりがちだ。だが、戸羽太市長の肝いりで実施された今回の自治体用訓練は違った。今まさに目の前で災害が起きているかのような緊迫感が漂い、こちらが気押されるほどだった。

 折しも、訓練前夜に土砂災害警戒情報が発表され、同市は真夜中から対策本部を設置していた。警戒は朝方に解除されたが、職員が事前に「災害はいつ起こるか分からない」体験をしていたことも、訓練に臨場感をもたらしたのかもしれない。

 訓練の最中はおのずと震災当時の記憶がよみがえり、心臓がずっと嫌な鼓動を打っていたが、「これから先、この光景が現実になる日は必ずまた来るのだ」と覚悟を改めさせられた。

 同市でもすでに、職員のおよそ半数が東日本大震災後の入庁となっている。訓練にあたっては、若手職員への説明会開催などを含め、1カ月にわたる入念な準備が行われてきた。

 当日は、津波による孤立地域の発生、使用不能となるヘリポート、意思疎通が難しい外国人避難者の存在-と、あらゆる“不測の事態”が想定された。誰がどの対応にあたるか、各課できびきびと人員配置がなされる様子はとても頼もしく、他紙の記者も「ここまでの訓練とは思わなかった」と口をそろえて感心していた。

 戸羽市長は「状況に即し実践的に行動できなければ、訓練の意味がない。職員には『落石の担当は建設課だからうちには関係ない』などと思わず、『ならば、こういう被害も出ているのでは』と想像力を最大限に働かせ、指示がなくても動けるようであってほしい」と語ったあと、最後に重々しく付け加えた。

 「われわれには、8年半前の反省がある」

 大津波によって庁舎が全壊し、行政機能がマヒしただけでなく、臨時、嘱託を含め111人の職員を失った同市の首長としての、あまりにも説得力ある言葉だった。

 災害はいつどこで起きるか…それは史上最悪の津波被害を受けた三陸地方とて例外ではない。今がすでに「震災後」ではなく、「次に来る災害の前」であるのだということを、何度でも肝に銘じなければと思う。

 ■鈴木英里(すずき・えり) 1979年、岩手県生まれ。立教大卒。東京の出版社勤務ののち、2007年、大船渡市・陸前高田市・住田町を販売エリアとする地域紙「東海新報」社に入社。現在は記者として、被害の甚大だった陸前高田市を担当する。

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