zakzak

記事詳細

北朝鮮の非核化協議で功急ぐ米国…ボルトン氏不在で狭まる選択肢 日本の安保や拉致に悪影響も

 米朝の非核化協議について、北朝鮮側は「決裂」を強調している。何らかの成果を得たいトランプ米大統領の足元を見た戦略との指摘もあるが、協議の行方はどうなるのか。

 米朝の実務者協議は5日、スウェーデンのストックホルムで約7カ月ぶりに行われた。協議後、北朝鮮は「交渉はわれわれの期待に沿わず、決裂した」と発表した。一方、米国は「北朝鮮側と良い話し合いを行った」とし、2週間後に協議を継続してはどうかというスウェーデン政府の提案を受け入れたことを明らかにした。

 2週間後に再び協議が行われた場合、今回の協議で米国は北朝鮮に何らかの提案をしたが、北朝鮮が持ち帰ったということになる。北朝鮮が反発したのは、米国に対して、さらに譲歩せよとメッセージを送ったのだろう。

 米朝首脳会談は、これまで3回行われている。2018年6月、シンガポールでの1回目の会談は具体的な結果はなかった。19年2月の2回目のベトナム・ハノイでは交渉決裂だった。6月の3回目の板門店会談では、2~3週間のうちに実務者協議を再開するとされたが、4カ月後にようやく再開にこぎつけた。

 トランプ氏の前のめり感は否めないが、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、協議を先延ばしする間に既成事実を積み重ねて、有利な結論を得ようとしている。

 北朝鮮は協議に先立ち、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を発射した。SLBMの発射は16年8月以来約3年ぶりとされる。SLBMは米国近海から発射すれば米国の脅威になり得るので、トランプ氏はこれまでの短距離ミサイルのように見過ごすことはできないはずだ。

 米国にとってはSLBMのほうが、大陸間弾道ミサイル(ICBM)より脅威だといえる。しかし、米国からの警告の類はまだない。

 これが、ボルトン前大統領補佐官の解任と関係があるのかないのかが気がかりだ。

 明らかなのは、ボルトン氏の在任中には、米国の安全保障では、「交渉重視」と「軍事オプション重視」の両極端にウイングを広げていたが、今や交渉重視の選択肢しか見えない。その点を北朝鮮に見透かされているのであれば、極東アジアの安全保障に必ずしも好結果をもたらさないだろう。対話と圧力は常に一体としていないと、まともな外交はできないからだ。

 トランプ氏は、ボルトン氏が反対意見を公言することを好まなかったという指摘もある。反対意見があるなら外で言わずに自分にだけ言えということだ。しかし、公言するのを利用する手もある。意見は自由だが、決定には従えといっておけばよかった。そうであれば、大統領の度量が大きいことを示せるし、大統領の決定がより重要であることも強調され、最終決定権者の大統領のメンツも確保できたはずだ。

 米国が功を急いで北朝鮮の非核化が不十分になると、日本の安全保障や拉致問題にも悪影響が懸念される。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

関連ニュース

アクセスランキング