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中国、新型肺炎「勝利宣言」の背景 内輪揉め、情報の整合性欠き…“上意下達”連携に残る課題も

 3月10日、習近平国家主席が武漢を視察した。これをメディアは「勝利宣言」と報じたが、発言には「依然厳しい状況」という一言が続いた。つまり、訪問はピリオドではなく勝利へと向かう空気を醸成する一つのシグナルの発信だろう。

 これを受けて国内の各メディアは、感染拡大の一定の落ち着きと、これまでの戦いを総括する報道を始めた。

 3月12日付『光明ネット』の記事「武漢の感染者ゼロ小区はどのように成し遂げられたのか」では、感染者ゼロ小区(社区、村を含む)の条件をクリアした社区の書記のインタビューを掲載し、その手法を紹介した。

 感染者ゼロとは、申請日から14日間感染者がゼロに加え、感染の疑いのある者や発熱を訴える患者、濃厚接触の可能性を指摘される者も含めてゼロという意味だ。当然、厳しい外出規制の結果だ。

 記事中では、現在の武漢(3月8日午後4時)では、感染者ゼロ小区に相当するのが小区で3021(全体の42・5%)あり、社区は135(9・6%)、村は1350(69・5%)となったことも紹介されている。

 感染拡大阻止では実際に最前線で動くのは小区の組織であり官僚たちだ。日本には中央や武漢市、湖北省の動きは見えても、なかなか末端の動きまでは見えてこない。

 ある社区の書記は、対策において「早」と「厳」は不可欠だが、より重要だったのは「暖」と述べている。「暖」とは街の封鎖の中でも物資は不足しないと住民が信じるに足る「暖かさ」だという。

 当たり前のことだが、力だけでは抑えられなかったということだ。

 一方、上意下達の連携がうまくいったのかといえば、課題が残ったとの指摘もある。3月12日付『中国経済ネット』は、「防疫・感染拡大阻止の戦いのなかで社会が備える力はどのように発揮されたのか」と題した記事で問題を指摘している。

 社会の力が積極的な作用をし、人々が病気を恐れる気持ちを軽減させたと評価する反面、課題も残ったという。〈感染拡大阻止の取り組みに参加した組織の一部には、その過程で、内輪揉めを引き起こし、情報の整合性を欠き、資源の不足や偏りを招いた〉というのだ。

 これは少なからず末端の手足が脳の指令通りに動かなかった不満が中央にあったことを示している。各組織間のコミュニケーションを重視しろとの戒めも同様の問題だ。

 また、科学的な導きが不足していたとの指摘もあり、これは上の指示よりも迷信などに左右されて動いた組織があったということだ。

 また、情報共有のプラットフォームの必要性が示され、それを通じてボランティアを募る重要性を強調されたことだ。外出制限の中、医療従事者を運び食料を各家庭に届けたのは誰だったのか。日本に当てはめて考えてみたとき、ちょっと思いつかないのである。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

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