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貧困に転落した母の友人の希望

 ドブラヴィーチェル、親愛なる日本の皆さま!

 それは、コロナウイルスの影響で大学が休校になり、実家に一時帰省した日のことでした。

 買い物に出た私は通りの正面から歩いてくる女性に気づき、近寄って挨拶を交わしました。

 その女性ライサは母の古い友人でした。

 私たちは少しの間会話してすぐに別れましたが、彼女の表情はまだ憂いを帯びているように見えました。

 その理由はライサが近年貧困に転落してしまったからです。

 かつては著名な経済学者だったライサでしたが、転落の原因は彼女の娘かわいさから始まりました。20年前、娘マリヤが19歳で妊娠し同い年の若い男と結婚したとき、ライサは娘家族の門出祝いにアパートをプレゼントしました。

 さらに彼女は、娘の夫が大学に行きたいと言えば学費を出してやり、車が欲しいと言えばその購入資金を出してやりました。

 とにかく、当時のライサは娘夫婦と孫を溺愛していたのです。

 それから十数年がたち、マリヤたち夫婦に3人目の子供が生まれたころから夫婦間のいさかいが絶えなくなってきました。原因はマリヤの新興宗教でした。彼女はある時から“もうすぐ世界の終わりが来る”と終末論を唱える新興宗教に傾倒していきました。

 夫は愛想をつかし、最後は同じ町内に女を作ってマリヤと子供たちの元を去っていきました。

 夫に去られたマリヤは、母のライサや子供たちの説得も聞かず、ますます新興宗教にのめり込み、あげくには自宅を売って、修道院が近くにあるという理由だけで選んだ、町から遠く離れた集落の倒れそうな家に子供たちを連れて引っ越していきました。

 しかし、集落があまりにも学区から遠いために子供たちが学校に通っていないと知ったライサは、娘を説得した上で孫たちを引き取り、自分の家で世話し学校に通わせました。

 そして現在、娘家族のために貯金をすべて使い果たしてしまったライサは仕事のエネルギーも失い、孫たちとともに少ない年金で暮らしています。

 その生活は楽ではないのですが、彼女にはひとつの希望があります。

 それは孫の一人でピアノの才能があり、町では神童と呼ばれている長男ルカの存在です。

 元々将来は音楽大学に行く予定だった彼は、母の問題に巻き込まれたために大学入学を断念し、今は町の音楽教室で子供たちを教えながら祖母の家計を助けていますが、奨学金制度が受けられるような優秀な成績を修めて音楽大学に合格できるよう、日夜頑張っているそうです。

 ようやくウラルにも暖かい春がやってくるようです。

 ■ジュリア・ミント 1994年ロシア連邦バシコルトスタン共和国生まれ。エカテリンブルクの医科大を経て、現在は大学院で眼科学を専攻する傍ら、日本人コンポーザーTAMAKIと共にノーザンスタイル・ダンスミュージック・ユニット“Crystal Mint”を結成。シンガーとして、主にヨーロッパで活動中。特技は英語、腕立て伏せ。(crystalmint.info)

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