菅氏はいかにして圧勝したのか 周到な戦略で地方票も - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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菅氏はいかにして圧勝したのか 周到な戦略で地方票も

 安倍晋三首相の突然の辞任表明に伴う今回の自民党総裁選は、首相を官房長官として支え続けた菅義偉(すが・よしひで)新総裁が国会議員票、地方票ともに圧勝した。二階俊博幹事長らの支持を早急に取り付け、党内7派閥のうち5派閥の支援を受けた国会議員票は序盤から優位だったが、その反動で派閥間の主導権争いが勃発。「派閥政治の復活」との批判も出て、地方票への影響が懸念された。そんな流れを止めたのは、菅氏が語った「原点」だった。

 菅氏は首相の辞任表明翌日の8月29日、二階氏に直接、出馬の意向を伝えた。二階氏率いる二階派(志帥会、47人)が菅氏支持を打ち出すと、最大派閥の細田派(清和政策研究会、98人)や第2派閥の麻生派(志公会、54人)などが雪崩を打って加勢した。

 国会議員票は8月中に大勢が決した一方、新政権発足を見据えたポストをめぐる各派の水面下の動きもあり、派閥間抗争の様相も呈した。議員票と地方票の得票差に大きな乖離(かいり)が生じれば、新政権発足後の基盤が脆弱(ぜいじゃく)になりかねなかったが、杞憂(きゆう)だった。

 「私の原点について、少しだけお話をさせていただきたい」

 今月2日の出馬表明記者会見で、菅氏は普段よりゆっくりとした口調で、これまでの半生を語り始めた。

 雪深い秋田県で生まれ、農家を継ぐことに抵抗して上京したこと。働き始めた町工場ですぐに厳しい現実に直面したこと。地縁も血縁もないゼロからのスタートで政治の世界に挑んだこと…。飾りのない言葉の数々は、官房長官としての記者会見で見せる「言葉数の少ない、こわもてのスポークスマン」とは異なる印象を残した。

 「あの出馬会見で党員の反応もガラッとかわった」。党中堅がこう振り返るように、「次のリーダー」を問う報道各社の世論調査で常にトップ級だった石破茂元幹事長を菅氏が上回るようになった。「たたき上げ」の半生が広く知られ、安倍首相や石破氏、岸田文雄政調会長ら「世襲議員」ではないことも新鮮に受け止められたようだ。

 秋田県出身で地方議員の経験をアピールしたことは、論戦にもプラスとなった。総務相時代に取り組んだ「ふるさと納税」や地方の観光振興につながる外国人観光客の「インバウンド誘致」など、実績を織り交ぜた地方経済重視の姿勢に説得力が増したからだ。石破氏を支えた地方の「反安倍」層の切り崩しにもつながった。

 加えて、収束が見通せない新型コロナウイルス対策を最重要課題と位置づけ、安倍政権からの政策の継続と安定を強調して支持を広げた。女性票をにらみ、少子化対策では「不妊治療の保険適用」を打ち出した。

 コロナ禍での特別定額給付金10万円の給付遅れなど国民がイメージしやすい課題を挙げて訴えた「デジタル庁」創設案は、菅氏の信条である省庁間の縦割り打破の象徴にもなった。こうした菅氏の改革志向にも国民の関心が集まるようになり、終わってみれば最初から最後まで「菅圧勝」の総裁選レースだった。(産経新聞 大島悠亮)

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