【日本の解き方】菅氏と財務省とせめぎ合い続く 消費税に頼る日本のいびつな社会保障制度 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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菅氏と財務省とせめぎ合い続く 消費税に頼る日本のいびつな社会保障制度

 菅義偉新首相をめぐっては、消費税に関する発言が注目されている。

 自民党総裁選中の10日放送のテレビ番組で、「将来的なことを考えたら行政改革を徹底した上で、国民の皆さんにお願いして消費税は引き上げざるを得ない」と述べた。一方、11日の記者会見では「安倍晋三首相はかつて、今後10年くらいは上げる必要はないと発言した。私の考えも同じだ」と述べた。

 このやりとりの前に伏線があった。9日に行われた岸田文雄氏と石破茂氏を交えた討論会で、菅氏は「経済成長なくして財政再建なし」と言った。これは経済主義といわれており、財務省の「財政再建なくして経済成長なし」という財政再建至上主義とは対極の考え方である。ちなみに安倍政権は経済主義を取り入れ、財務省は忌み嫌っていた。

 財務省が経済主義を否定するときには、人口減少と消費税を結びつけるレトリックを用いるが、菅氏の10日の発言はそれとそっくりだった。ということは、菅氏が前日に経済主義に言及したので、財務省があわてて巻き返したとの見方もできる。

 実はそれ以前から、さや当てはあった。経団連の中西宏明会長は7日に開いた記者会見で「財政健全化へのステップをもう一回しっかりしてもらいたい」と述べた。

 これは、新型コロナウイルス対策の必要から、政府の歳出が膨張し、債務残高が増大したことを理由とするものだ。この発言について、主要なマスコミは肯定的に取り上げている。

 本コラムの読者なら、この財務省論法が破綻していることをご存じだろう。政府のバランスシート(貸借対照表)の中で、右側の債務残高だけを取り上げるのは適切ではない。会計的に政府の子会社である日本銀行を連結した「統合政府」のバランスシートで左側の資産を除いたネット債務残高で見なければいけない。

 そうしてみると、統合政府のネット債務残高はほぼゼロであり、財政再建の問題はないことが理解できる。その意味で、財務省の説明と、それをうのみにした発言や報道は間違いを広げているといえる。

 そこで、財務省も最近は、人口減少と消費税を結びつけて増税の必要性を主張している。しかし、これも間違いだ。そもそも消費税を社会保障目的税としている主要国はない。というのは、保険方式で運営されている社会保障では社会保険料が究極の目的税になるからだ。医療保険などの社会保障では給付とリンクしている社会保険料は徴収しやすいし、各国ともにマイナンバーとリンクさせ、税と一体として歳入庁により効率的に徴収している。

 マイナンバーとのリンクや歳入庁設置をしないまま、消費税に頼る日本の社会保障制度は先進国で唯一であり、極めていびつな形になっている。少子化で行うべきは、消費増税ではなく、マイナンバーと歳入庁である。

 いずれにしても、菅氏と財務省とのせめぎ合いが当面続くだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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