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【大前研一 大前研一のニュース時評】誰の得にもならない米中貿易戦争 世界の人々は“安物劇場”にほうり込まれた? (1/2ページ)

 米国のトランプ政権は15日、中国の知的財産権侵害への制裁処置として、総額約500億ドル(約5兆5000億円)分の中国製品に25%の追加関税を発動すると発表した。約1100品目が対象。うち約820品目は7月6日に発動する。これに対し、中国は米国製品に同規模の報復関税を課すと表明した。

 この米中間の貿易戦争、外から見ている分には面白い。子供じみていて、誰の得にもならないからだ。中国製品に関税をかけることで、米国は約1兆円強の税収があるわけだが、その分、米国の消費者は高い製品を購入することになる。

 ただ、この関税はトランプ大統領の長女イバンカ氏が中国で手掛けるファッション・ブランドは除外している。「何を考えているんだ、このオッサンは」とブーイングしたくなることを平気でやるところが、トランプ氏の真骨頂だ。

 一方、中国が狙い撃ちしている米国製品は、トランプ氏の支持者が多い米国中西部--いわゆるトランプ・カントリーの大豆、トウモロコシなどの農産物。中国もしたたかだ。さらに、もし中国が報復関税をかけるなら追加的に20兆円分にも関税をかける、と脅している。とどまるところを知らない深みにはまっていく可能性がある。

 トランプ氏は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談もテレビのリアリティー・ショーと考えていた。どう演出をすればいいか、ということばかり気を配っていたようだ。米国のジャーナリストは「米朝会談は非核化の時期も人権問題もあいまいで内容がない」とたたいているのに、米国民の過半数は「よくやった。北朝鮮の脅威を除いてくれた」と賛美している。米国人の多くはリアリティー・ショーを見て育っているので、こういう結果になるのだろう。