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「死者続出マンション」が生んだ北朝鮮国民の抗議活動 (2/3ページ)

 件の新築マンションの部屋は、朝鮮労働党両江道委員会の幹部に割り当てることにしたのだという。市の外れに掘っ立て小屋を建て、資材と労働力、資金を提供しつつ、完成を待っていた住民たちは突然の知らせに激怒した。

 新たにあてがわれたマンションは、未だに骨組みも組み上げられていない。このままでは氷点下30度に達する厳しい冬を、凍死の恐怖と闘いながら掘っ立て小屋で過ごすことを余儀なくされる。

 住民たちは、人民委員会の信訴(シンソ)課に押しかけて、集団で激しく抗議した。

 「信訴」というのは、中国の「信訪」と同様に、理不尽な目に遭った国民が、そのことを政府機関に直訴するシステムで、一種の「目安箱」のようなものだ。元々は法制度の外で運用されていたものが、1998年に制定された信訴請願法で、法的根拠が与えられた。民主主義や言論の自由のない北朝鮮で、庶民がお上に何かを申し立てることのできるほとんど唯一の仕組みだ。

 (参考記事:北朝鮮市民、党本部前で抗議の切腹「警察署長に全財産を奪われた」

 金正日時代からは機能が低下したと言われているが、平安南道(ピョンアンナムド)人民委員会(道庁)で勤務経験を持つ脱北者は今回の件について「行政の方が分が悪い」として、次のようなエピソードを語った。

 2000年代初頭、平安南道肅川(スクチョン)郡の党委員会責任書記が、一方的に住民を家から追い出し取り壊した上で、自分用の2階建ての住宅を建てた。追い出された4世帯の住民は、党中央委員会に信訴を行った。その結果、訴えは正当なものと認められ、責任書記は更迭され、「20世紀版の卞学道」(ピョン・ハクト、古典小説<春香伝>でヒロインをいたぶる悪徳役人)との烙印を押され、農村に追放されてしまった。

デイリーNKジャパン

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