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【日本の元気 山根一眞】平成の「人情」と「個人情報」 25年の歳月を埋めた姉探し (1/2ページ)

 残り少なくなった平成時代。それは「個人情報の保護が著しく厳しくなった時代」だと実感する出来事があった。久々に拙著、文春文庫版の『スーパー書斎の仕事術』を開いた。元本は1986年刊のベストセラーだが、文庫化は89年4月刊。平成はこの年の1月8日に始まっているのでちょうど30年前の出版だ。

 私はこの文庫版の最後に、情報の仕事術の一例として「25年の歳月を埋めた姉探し」という一文を記していた。すっかり忘れていたが、読み返して我ながら感動してしまった。その物語はこうだ。

 ブラジル在住の37歳の友人が来日。彼は家族と25年前にブラジルに移住したが、姉だけが日本に残った。その後、金沢市在住の姉とは音信不通となり、今回25年ぶりに来日して探し回ったが行方がつかめず、帰国まで残すところ2日。「何とか探してほしい」と頼んできたのだ。ネットなど影も形もない時代ゆえ、頼りは固定電話のみだった。

 朝9時、25年前に在住していた金沢市の電話番号案内の104を頼りに尋ねたが、町名は変更されたらしく住所も該当氏名もなし。そこで変更後の町名を調べ、その地元の交番に電話。事情を話し、電話による「道案内」を請うたのだ。初老と思われる巡査は理解してくれて、居住者カードに姉の名を見つけアパートの連絡先を教えてくれた。その管理人に電話すると「結婚して引っ越した」というが、夫の姓と会社の屋号らしきものをわずかに覚えていた。