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【高橋洋一 日本の解き方】不適切統計は厚労省だけなのか 担当職員の減少で精度の甘さも…省庁横断的な統計部局が必要だ (2/2ページ)

 どこの世界でも同じだと思うが、統計の世界でも、従事人員の不足は間違いを招くという有名な実例がある。1980年代の英国だ。政府全体の統計職員約9000人のうち、約28%にあたる2500人を削減したところ、80年代後半になって、国民所得の生産・分配・消費の各部門の所得額が一致せず、経済分析の基礎となる国民所得統計の信頼が失われてしまった。

 厚労省の毎月勤労統計で、都内の従業員500人以上の事業所について「全数調査」から「3分の1抽出」に切り替えたというのも同省の統計職員の不足が背景にあるのではないか。実際、厚労省の統計職員は大きく減少している。

 農水省の統計職員が減少するのはある程度理解できる。かつては、詳細な農業統計が求められたが、そのニーズが減少したからだ。本来ならば農水省の統計職員を他省庁の統計職員に振り替えるべきだったが、日本では各省ごとに統計が分散しているので省庁の壁があり、人員を配分することができなった。

 統計職員の減少の影響は、今回の毎月勤労統計以外の統計でも心配事だ。総務省の家計調査はサンプル数が少なく、ブレが大きいことがしばしば指摘されている。また、総務省の消費者物価統計も海外から精度が甘いと指摘されている。

 統計の信頼は急務である。省庁の縦割りを廃止し、省庁横断的な統計部局を作り、統計職員を確保した上で時代のニーズに対応した統計作成が求められている。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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