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【有本香の以毒制毒】中国の「春節」祝う安倍首相に注文 チベット人、ウイグル人の「2月5日」をお忘れなく (2/2ページ)

 筆者は、インドのダラムサラで1度「ロサル」を過ごしたことがある。チベット正月には、「デシー」という、チベット人いわく「日本の赤飯のような」特別な米飯が振る舞われ、当然、仏への祈りがあり、民族の歌や踊りがある。時期こそ1年おきに春節と重なるが、祝い方がまったく違うのだ。

 にもかかわらず、数年前には東チベットで、中国当局が「春節を祝うように」とチベット人に強要し、それに反発したデモが起きて武力弾圧へ発展したという、悲しい出来事があった。

 一方、ウイグル人にとって「2月5日」はどんな日かといえば、これが「一年で最も悲しい日」と言っても過言でないのだ。

 今から22年前の1997年2月5日、新疆ウイグル自治区北西部のグルジャという町で、市民のデモが弾圧される事件が起きた。

 人権団体によれば「200人近くが亡くなった」とされ、亡命ウイグル人団体は「4000人が行方不明になったままだ」と主張している。拘束されたウイグル男性が、マイナス20度にもなる屋外に集められて水をかけられ、生きたまま氷漬けにされたというショッキングな報告もあった大事件だ。

 今年も世界各地で、亡命ウイグル人らが、この「2月5日」の事件を忘れないとして、中国大使館付近で抗議デモを行った。

 日本の政界で、チベット問題や、ウイグル問題に最も詳しい一人である安倍首相が、よもやチベット人、ウイグル人の苦難を忘れたとは思わない。

 だが、過剰とも映る「日中友好アピール」に心を痛める人々もあることを、今一度思い出してほしいとも思うのである。 

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす』(産経新聞出版)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』(産経新聞出版)など多数。

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