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【富坂聰 真・人民日報】習近平氏の訪朝目的…対立ではない「脱米」 中国は米国の「一部の政治勢力」に狙い? (2/2ページ)

 この流れをもう一段ぐっと前に進めようという狙いだ。

 事実、会談で習近平氏は「朝鮮半島の非核化を推進した北朝鮮の努力を評価する」とした上で、「独自の発展にできる限り協力する」ことを約束している。

 驚いたのは、訪朝団の中にマクロ経済の司令塔である何立峰発展改革委員会主任が入っていたことだ。これは大きな経済協力の合意が、その場でできるともとれる布陣なのである。

 中国はこれまで朝鮮半島問題ではアメリカと足並みをそろえてきた。アメリカに協力して北朝鮮に厳しいプレッシャーを与えながら、その一方で、アメリカから韓国に「THAAD(高高度防衛ミサイル)」を配備するという嫌がらせを受けても、その姿勢が揺らいだことはなかった。そんな中国がここにきてなぜ急に「脱米」に舵を切ったのか。

 当然、そのきっかけは米中貿易摩擦の激化だ。だが、中国が対抗しようとしているのはトランプ大統領ではなく、アメリカという国でもない。中国の好きな表現を借りれば「一部の政治勢力」ということになり、それはポンペオ国務長官、ボルトン大統領補佐官などに代表される面々だ。

 ハノイの米朝首脳会談直後に北朝鮮が、ポンペオ国務長官を会談から外せと名指ししたことでもわかるように、高圧的な態度で高いハードルをふっかける勢力が中朝の共通の敵になっている。

 中国が最近、ロシア、イランと距離を縮めたのも同じ文脈でとらえることができるのだ。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

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