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【富坂聰 真・人民日報】米中貿易協議で中国が「大物」投入か 懸念される2つのシナリオ、脱米で日本に冬の時代到来も (1/2ページ)

 8月の末、北京で会った人物は、今後の米中経済戦争の見通しについて、こう声を潜めた。

 「中国は、トランプ政権との貿易協議の責任者として王岐山(おう・きざん)国家副主席を投入することを検討し始めたようだ。もし、そうなれば中国の本気度は確実に伝わる。劉鶴(りゅう・かく)副総理へのダメ出しというわけじゃないが、11月までに大きな山があると踏んでいるじゃないだろうか」

 ただ一方では、「安易な合意よりも、一度は双方がルーズルーズによって被る損害の大きさを、米中それぞれの国民が冷静さを取り戻すまで、徹底して関係を悪化させるのも、長期的にはかえってメリット」だとの考え方も働いていて、決断は持ち越されているという。

 王岐山といえば、中国共産党中央規律検査委員会書記として反腐敗に辣腕(らつわん)を振るったイメージが強いが、習近平政権がスタートする以前は、金融の専門家として経済を担当。世界銀行やIMF(国際通貨基金)など国際機関のトップとの交流も深く、アメリカにも友人が多いことで知られる。

 米中貿易摩擦が本格的に火を噴いた直後の2018年10月にはイスラエルを訪れ、翌月には訪中したヘンリー・キッシンジャー元米国務長官と北京で会談した。いずれも、米中の火消し役としての動きだったと解釈された。

 大統領選挙を見据え、さらに年末のクリスマス商戦への影響を低く抑えたいとすれば、米中の合意の期待が高まるのは、秋である。加えて米中首脳が顔を合わせるAPEC(アジア太平洋経済協力)で進展を望むのであれば、それに向けた調整は、いまから始めないと間に合わない。そんな計算が働いたのかもしれない。

 だが、大物投入となれば、中国の合意への意思は伝えられるが、一方で失敗すればダメージは大きい。メンツの問題にも響き、中国が交渉から一気に引いてゆくことも考えられる。

 懸念されるシナリオはおおむね2つだ。

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