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ノーベル化学賞・吉野彰氏の“素顔”と成功までの「3つの壁」 (2/2ページ)

 研究は順風満帆だったわけではない。吉野さんはビジネスで成功するために乗り越えなければならない「3つの関門」を説く。最初に経験するのが、基礎研究の段階の「悪魔の川」。ここで大半のプロジェクトが対岸まで泳ぎ切れずに脱落する、つまり研究段階で終わってしまう。

 開発研究に進むと待ち受けるのが「死の谷」。次々と問題が立ちはだかり、事業化の前にここでも大半が脱落する。吉野さんは「この段階では、なるべく人手をかけないことだ」とアドバイスする。事業化の道筋が見えて初めて、人材と予算をかけるのがよいやり方だという。

 最後が「ダーウィンの海」の段階。努力が実って事業化にこぎつけたものの、市場で見向きもされない段階だ。生物進化の過程で起こる自然淘汰(とうた)になぞらえて、生物学者ダーウィンの名がついている。

 リチウムイオン電池の場合、出荷が伸び始めるまで5年ほどかかった。

 「将来ぜひ、この3つ壁を完璧に乗り越えていただきたい」と、吉野さんは若者にエールを送った。

「企業研究者が受賞する21世紀型」

 ■NPO法人21世紀構想研究会理事長で科学ジャーナリストの馬場錬成氏の話

 「21世紀以降のノーベル賞は、原理原則の発明・発見だけでなく、発明された技術が世の中の発展にどれだけ貢献しているかが重視されるようになっている。リチウムイオン電池の実用化の貢献はその条件にぴったりだった。企業の研究者がノーベル賞を受賞するのは『21世紀型』だが、基礎的研究で世界をリードしていなければ、実用化でも後手に回る。日本の過去の研究成果でノーベル賞が出ていることはいいが、基礎研究を重視する政策目標を国家として持続しなければ、今後も世界の科学研究の先端で勝負するのは難しい」

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