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開会式の公式服装 オリ・パラ1600人分の採寸にAOKIが奔走 (2/2ページ)

 公式服装は開会式用のほかに、結団式などで一部の選手が着た式典用も存在する。つまり、オリパラあわせて約1600人の日本代表選手団に、AOKIは2着ずつ公式服装を用意することとなった。アスリートというのは、一般人とは体格が違う。当然、オーダーメイドとなるため、ひとりひとり採寸してから仕立てに入る。コロナ禍で代表選考が直前になってしまった競技団体もあり、取材時(7月上旬)はまさに混乱の最中にあった。

 「今回は、様々な体型に対応できるよう『パーソナルオーダー』でおつくりしており、通常は採寸から納品まで1ヶ月程度いただいておりますが、短期間で作製できるようシステムを再構築しました。これに関しては、1年の延期が幸いし、より洗練されたと思います。早くに代表に内定された選手も、大会までの期間に体が大きくなったり、変化することもある。そこは選手の皆さんの声に耳を傾けながら作業にあたりました」

 今回の東京大会は、史上初めてオリンピックとパラリンピックの日本代表選手団が共通の公式服装を着用する。JOCおよびJPCから公募があったのは2019年の春頃で、提示されていた「ニッポンを纏う」というコンセプトのもと、コンペに参加した企業はそれぞれ独自の公式服装を作製。同年夏に選定会が開催され、AOKIの用意した公式服装の採用が決まった。

 「洗濯ができるスーツ、ストレッチの効いたスーツ、軽いスーツと、スーツにも機能性が重視される時代になった。機能性でいえばスポーツウエアは先進的であり、スーツを中心に手掛けるAOKIとして、スポーツとの接点を持ち勉強したいという気持ちがあった。それが公募に参加した理由のひとつです」

 素材はすべて国産のもので、白いジャケットには、伝統柄の「工字繋ぎ」を陰影でプリントしている。その一方で、ジャケットの前を留めるメタルのボタンには前回の東京大会の公式服装で採用されたデザインを踏襲し、裏に「TOKYO 2020」と刻印した。下町の職人に依頼し、50年後も色あせない特殊なメッキ加工が施されているという。

 公式服装は当然ながら一般販売されず、選ばれし日本代表選手団しか着ることの許されない誇り高き洋服だ。だからこそ、それを仕立てる人間もまた誇りを抱いて仕事にあたるのである。

 ■取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)

NEWSポストセブン

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