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【ABS流 令和NEWバブルのすすめ】遊びマインドがクリエイティブビジネスを生み出す

 1980年代は遊びと仕事は一体で、遊びから生まれた思いつきや直感によってクリエイティブを生み出す環境がありました。

 マンションメーカーと言われていた小さなファッションブランドが、瞬く間にDC(デザイナー&キャラクター)ブランドとして急成長し、その後、日本のファッション業界を席巻するというサクセスストーリーも生まれました。

 私(カツア・ワタナベ)は当時パリに住んでいましたが、仕事で日本に行ったときはDCブランドのデザイナーたちと一緒に遊んでいました。ただ遊んでいたのではなく、他の業界のクリエイターたちと交流し、ブレーンストーミングで奇想天外なアイデアや発想を交換する創造的な遊びをしていました。

 そうした異業種の交流のなかから、YMOのメンバーの一人がブリックスというファッションブランドを出したり、グラフィックデザイナーとスタイリストたちが集まってテクノポップバンド「プラスチックス」を作るなど、業界を超えたクリエイティブも盛んでした。

 面白いものにはお金を惜しまない時代で、あるDCブランドの30代役員が7億円のエッシャー・コレクションを購入して話題になったのもこの頃です。

 遊びを通して感性を共有できるコミュニティに属することで、クリエイティブなネットワークが広がります。それによって、業界情報や最新のアイデアソースをいち早くゲットでき、それを仕事に生かすことで新しいモノやコトが生まれます。遊ぶことが仕事に役立ち、遊ぶ人ほど多くの情報や人脈、クリエイティブなアイデアを持つことができるのです。

 しかし、バブルが崩壊するとこのような遊びはどこかに消え去り、自粛モードに入って、遊びは悪いことのようなイメージが定着してしまいました。その結果、バブルの成長エンジンになっていた大人の遊びが消滅し、企業も遊び心やチャレンジ精神を失い、イノベーションが生まれない環境となってしまったのです。

 一方、欧米ではクリエイティブを生み出す遊びマインドは今も健在。最先端の科学やテクノロジーをベースに、それを高い感性で表現するイノベーティブなビジネスがたくさん生まれています。

 イノベーションとは既存の考え方を打ち壊し、今まで世になかった価値を生みだすこと。新しい概念を創造することによって、不可能と思われていたことを可能にすることです。しかし今の日本企業は、新規事業などに既存の考え方を当てはめた完璧な事前エビデンスを求め、イノベーションの芽を摘んでいます。

 世界から後れをとっている日本企業のイノベーション創出に必要なのは、技術革新ではなくマインドセット革新です。それには、枠組みにとらわれない自由な発想が不可欠で、その発想を醸造するのが遊び感覚です。

 想像はイマジネーション、創造はクリエイション。そして遊びは右脳を使って自由な発想を膨らませ、イマジネーションをかき立てるクリエイティブの源。それが令和の日本にイノベーションを生み出す原動力となるのです。

 ■ABS世代 昭和30(1955)年から43(68)年生まれの、若者時代にバブルを謳歌した世代。

 ■カツア・ワタナベ 米ニューヨークのDecode Creative代表。クリエイティブディレクター。ファッション、ビューティー、ウェルネス、ライフスタイルなどのブランディング、クリエイティブ、商品開発などの感性ビジネスのスペシャリスト。

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