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【定年後 難民にならない生き方】帰省できず心配…老親の最新情報をキャッチする丁寧な声掛けとは?

 帰省で久しぶりに会った親の背中が想像以上に小さく、丸くなっていてハッとする-。お互いに年を重ねれば、そんな瞬間を味わう機会も増えてくる。近くにいるからこそ、いちはやく察知できる老いの予兆もあれば、離れて暮らしているからこそ気づける変化もある。

 しかし昨年、今年とコロナ禍の影響で例年通りの帰省がかなわず、親の様子がよく分からないという悩みも耳にする。実家に足を運びづらい状況下でも、老親の最新状況を知るにはどうすればいいのか。ケアマネジャーの矢尾眞理子さんに聞いた。

 「まずは最近の暮らしぶりを丁寧に聞いてみましょう。もし、“これまで当たり前にやってきたこと”をやらなくなっている場合は黄色信号。例えば、母親が『暑くて料理をする気にならない』と言ったとします。一時的なものであればいいのですが、気力の衰えのサインだった場合、放置するとあっという間に体力も落ちかねません」

 友人知人の病気やケガ、入院といった話題の背景には、親御さんご本人の健康への不安や寂しさが隠されている可能性もある。

 親がくどくど愚痴を言い始めると、子どもとしては面倒な気持ちにもなるし、『そんなこと言っても始まらない』『前向きに考えれば?』などと励ましてしまいがち。だが、ここで大切なのはむやみに背中を押すのではなく、愚痴を言わざるを得ない「背景」に想像を巡らせることだという。

 「もしかしたら、何かストレスを抱えていたり、身体のどこかが痛むなどの不調が原因になっていたりするのかもしれません」

 また、気をつけたいのが親の大半は「大丈夫?」と子どもに聞かれると、「大丈夫」「問題ない」と答えてしまうという点だ。「迷惑をかけたくない」「心配をかけたくない」のはもちろん、「生活にあれこれ口を出されたくない」といった心理も働く。

 「定年世代の息子さんの場合、親を心配するあまり、尋問のような聞き方になってしまう人が少なからずいます。親を質問攻めにするより、『お互い、この1年はしんどかったね』と自分の本音や弱みを吐露するほうが、親も話しやすくなるはずです」

 子どもの立場からするとつい、親はいつまでも元気で憎まれ口を叩くかのように錯覚しやすいですが、老後の健康トラブルは思いの他、身近なものです。例えば、夏場、高齢者に多い「爪水虫」や「巻き爪」などの足トラブルが歩行の妨げになることも。新型コロナに対する不安も高じた結果、図らずもとじこもり生活が長引き、筋力は衰え、ますます歩行が不自由になっていくといったことは誰の身にも起こりうるのだ。

 「親御さんの不安や寂しさをキャッチしたら、家族だけで受け止めようとしないことも大切です。地域包括支援センターや民生委員さん、ご近所の方など、助けてくれる可能性がある人にどんどんSOSを出しましょう」

 親だけではなく、自分も我慢せずに「疲れた」「しんどい」と周囲に伝えていく。それはつかみどころのない不安に飲み込まれることなく、コロナ禍を乗り切る重要スキルでもある。 

 ■島影真奈美(しまかげ・まなみ) ライター/老年学研究者。1973年宮城県生まれ。シニアカルチャー、ビジネス、マネーなどの分野を中心に取材・執筆を行う傍ら、桜美林大学大学院老年学研究科に在籍。近著に『子育てとばして介護かよ』(KADOKAWA)、『親の介護がツラクなる前に知っておきたいこと』(WAVE出版)。

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