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【みうらじゅん いやら収集】エロを連想する漢字の湯飲み…『鱚』何て読むでしょう?

 寿司屋に行くと“魚”偏(へん)の漢字がズラーッと並んだ少し大きめの湯飲みを出されることがある。

 『鯖』、コレはサバだろ、『鯛』、コレはタイだろ、などと思ってる内に注文した寿司が目の前に並ぶ。でも、何個かは読めてもそのほとんどは分らず仕舞。ま、今後、漢字検定を受ける予定もなし、ましてや寿司職人を目指すつもりもない。腹いっぱいになってくると、漢字の読み方などどうでも良くなって、お勘定。

 いつか、寿司屋の大将が僕の隣に座ったカップルに「魚偏に喜ぶと書いて何て、読むでしょう?」などと、ニヤけながら話掛けていたことがあった。

 「え?分んない。ねぇ、知ってる?」

 女の方はそう言って彼氏を見てた。ここは博識なところを披露したいところだろうが出ない。「ヒントあげましょうか?」と、大将は言って「お二人とも大好きなことですよ、分ったでしょ?」と、さらにニヤけた。

 それでピン!ときたのか男は少し、躊躇した口振りで「セックスですか?」と、返した。「お客さん、そんな名前の魚はいませんよ。キスですよ、キス!」と、言って大将は大笑いした。冗談ならまだしも男は彼女の前で大恥をかき、その後二人は気まずそうに寿司を食い、店を出ていった。

 僕もその男を笑えない。知らなかったからだ。だったら逆にいやらしい意味にとれる漢字ばかり並べた湯飲みを作るのはどうだ?と、その時、閃いた。魚偏にはあるか?そうだ『鮑』があるし、マグロ“鮪”も使うよな。『貝』も入るだろ。『竿』『濡』『勃』『挿』『喘』『亀』『吸』『襞』『悶』…いろいろ浮かんできた漢字をメモした。

 それが、ある時、雑誌の企画に通り、二個だけ作った。一個は僕、もう一個はラジオ出演した時、持参し、高田文夫さんに貰って頂いた。「使い道ねぇよなァ」と、言いながらも高田さんは嬉しそうだった。

 ■みうら・じゅん 1958年2月、京都市生まれ。イラストレーター、漫画家。エッセイストとしても知られ、97年に「マイブーム」で新語・流行語大賞を受賞した。近著に『ひみつのダイアリー』(文春文庫)など。2021年本屋大賞「発掘部門/超発掘本!」で、著書『「ない仕事」の作り方』(文春文庫)が受賞。週刊文春の人気連載「人生エロエロ」をまとめた新刊『メランコリック・サマー』(文春文庫)が発売中。

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