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【中本裕己 エンタなう】米南部の奴隷農場と現代の女性人気作家が交錯 異次元スリラー 映画「アンテベラム」

 かつては名画といわれた「風と共に去りぬ」が、白人目線から描かれた奴隷制度の正当化だとして批判にさらされるようになった。黒人女性が“1人2役”を演じる映画「アンテベラム」(公開中)は、まさにその南北戦争前夜の“本当の恐怖”を背筋が凍るような異次元的なスリラーの手法でえぐり出す。

 冒頭の4分間、米南部の雄大なプランテーションが映し出される。壮麗な邸宅に、完璧に刈り込まれた綿畑、遊んでいる白人の少女、洗濯に精を出す黒人奴隷たち。やがて逃亡から連れ戻されたばかりのエデン(ジャネール・モネイ)が大写しになる。言葉を発することさえ禁じられた黒人奴隷たちのただならぬ地獄絵図へと観客は引きずりこまれる。「風と共に去りぬ」と同じレンズで撮影されたという牧歌的風景が、暗転してゆく。

 場面は変わって現代。リベラルな社会学者、ヴェロニカ(同一人物)は優しい夫とかわいい娘に囲まれ、著書はベストセラーに。出張先のニューオーリンズでの講演会を成功させ、友人たちとのディナーの後、待たせていた車に乗り込むとホテルと異なる方向へ…。

 果たして、エデンとヴェロニカの接点は?

 意外性に満ち、衝撃的なオチが待っているヴェロニカを熱演するモネイは、「ムーンライト」「ドリーム」での演技が絶賛されグラミー賞常連の個性派シンガーでもある。どんな逆境にあっても芯がぶれず、堂々とした立ち姿がカッコイイ。予備知識なしで見たい。 (中本裕己)

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