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【中本裕己 エンタなう】鴨川にグランドピアノの妙…京都愛と音楽愛に満ちて 溶け合う「音」と感情 映画「ミュジコフィリア」

 ロケ地としてこの上ない場所、京都。それだけにどこを切り取るかで成否が大きく変わってくる。映画「ミュジコフィリア」(公開中)は、古都に漂う「音」が、人と人のつながりや激しい感情と溶け合って「音楽」になるまでを生き生きと描く青春群像劇。鴨川の中州に置かれたグランドピアノを主人公が弾き、ヒロインが歌う場面が実に印象的だ。

 京都の芸術大学に入学した朔(井之脇海)は、クセの強い教授や学生が集まる「現代音楽研究会」に勧誘される。そこには朔が憧れる幼なじみのバイオリニストの小夜(川添野愛)や、亡き著名作曲家の息子で、自身も天才作曲家と期待される大成(山崎育三郎)がいた。実は大成は朔の異母兄で、朔は音楽家を断念させられた母を想い音楽を憎んできた。ところが、朔に思いを寄せるピアノ科の凪(松本穂香)の後押しで、秘めた才能が開花し始める。

 難解な現代音楽も、“鴨川にそよぐ風を音楽にする”実験など身近に感じられる工夫がある。一方で、ブラームスの楽譜を厳格に重んじるあまり、大成が学生オケを叱責する場面も。鴨川で踊った出雲阿国を例に出すまでもなく、京都は古典と進取が不思議に溶け合う町。この地で異母兄弟は童心に返り、恩讐を超えて音楽を見つける。

 京都で医大生の青春を描いた「ヒポクラテスたち」(1980年)にも出たきたやまおさむが登場。さそうあきらの同名漫画が原作で、京都愛、音楽愛に満ちている。 (中本裕己)

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