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【ドクター和のニッポン臨終図巻】人間国宝・坂田藤十郎さん 前日の散髪「人気役者の見事な最期」 パーキンソン病を発症、闘病短く「ほぼ生涯現役」 (2/2ページ)

 すーっと息を引き取る。平穏死の最期の呼吸とは、まさにそんな様子です。死が間近に迫ると、下顎(かがく)呼吸といって、呼吸回数が減ると同時に、顎を上下させ大きくゆっくりと息をするようになります。

 来年2月に公開が決まった私が原作の映画『痛くない死に方』(高橋伴明監督)では、宇崎竜童さんが、この下顎呼吸を演じています。私が医療指導に入り、リアルな「死にざま」を宇崎さんにお願いをしました。また臨終の1日前に現れる様々な症状(私は「死の壁」と呼んでいます)を知っているか知らないかで、最愛の人を見送るご家族の心構えが、大きく違ってくるはずです。

 扇千景さんと息子さんは、慌てることなく、穏やかに藤十郎さんの旅立ちを見届けました。そして11日に藤十郎さんは「髪が伸びた。お年寄りみたいだ」と理髪師を呼んだとのこと。死の前日の散髪とは、人気役者にふさわしいお見事すぎる最期。「昨年の87歳まで一度も舞台を休んだことがなく、風邪もひかないで芸能人生を過ごせたことは皆さんのおかげです」と千景さん。道ならぬ恋を演じ続けた役者さんの人生の花道は、妻の愛によって完結したようです。

 ■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。東京医大卒業後、大阪大第二内科入局。1995年、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業。外来診療から在宅医療まで「人を診る」総合診療を目指す。この連載が『平成臨終図巻』として単行本化され、好評発売中。関西国際大学客員教授。

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