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【ドクター和のニッポン臨終図巻】料理人・神田川俊郎さん 和食の繊細さを教わった思い出 (2/2ページ)

 あまり大きな声では言えませんが、75歳以上の高齢者を一律受け入れ拒否している病院もあるそうです。

 では、近くの開業医が診てくれるかといえば、陽性と分かればそれもほぼ不可能。でも僕は、「自分が診た陽性患者さんは誰ひとり死なせないぞ!」という想い一つでステロイドとイベルメクチンを持って連日、尼崎の街を駆けずり回っています。

 それなのに、神戸や梅田の繁華街で買い物や飲食を楽しんでいる人たちがいる……こちらは死の恐怖と隣り合わせの戦場と化しているのに、一体どうなっているの? と叫び出したくなるのをぐっと堪えています。

 今回の変異株は、持病のない人も重症化することが特徴です。神田川さんのようなお元気だった人でも突然、命を奪われてしまうのです。いつまでこの我慢が続くのか、ワクチンを打ち終えれば、元の生活に戻れるのか…それは、誰にもわかりません。

 またあの「神田川本店」に伺って、俊郎さんに献杯できる夜は来るのだろうか。確か、「あたたかい人には、あたたかい人が集まる」という直筆と鯛の絵が店に飾られていたはずです。集まれない今、主を失ったあの絵はどうしているでしょう。

 ■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。東京医大卒業後、大阪大第二内科入局。1995年、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業。外来診療から在宅医療まで「人を診る」総合診療を目指す。この連載が『平成臨終図巻』として単行本化され、好評発売中。関西国際大学客員教授。

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