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【マンガ探偵局がゆく】昭和30年代の田舎を伝えたい 自らの少年時代をもとに描いた勝川克志の「庄太」 (2/2ページ)

 主人公の庄太は小学生。家族は農業をしながら陶器工場で働く父親と専業主婦の母親、しっかりものの妹、畑仕事やわらじ作りが得意なおばあちゃんの5人。亡くなった先代は養蚕農家で、屋根裏にカイコを飼っていたが、いまは子ども部屋になっている。

 友達は、メカに強く虫やキノコなども詳しい金一、イジけたナスビ、学校の先生の子ども・町子など。都会からはシームや丈二など転校生もやってくる。

 大きな事件は起きないが、夏には沼や川で泳ぎ、冬には山でスキーやそり遊び、秋には学校総出でイナゴ取り大会と退屈する暇がない。そのほかの娯楽には、映画館もあるし、紙芝居屋さんもいる。

 のんびり、ゆったりした時間の流れの中に、自然災害や友との別れなども経験しながら、庄太は成長していく。

 一編一編のお話もさることながら、今の子どもにはなじみのない味噌作りやユイ(農家の助け合い制度)、近眼治療機などについては絵入りの簡潔な説明「克坊豆知識」が加えられていて、これがなかなか懐かしい。お孫さんを喜ばせる以上に、依頼人を喜ばせること請け合いだ。

 単行本は上下2巻がさんこう社から出ている。電子版でも入手可能だ。

 ■中野晴行(なかの・はるゆき) 1954年生まれ。フリーライター。和歌山大卒業後、銀行勤務を経て編集プロダクションを設立。1993年に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』(筑摩書房)で単行本デビュー。『謎のマンガ家・酒井七馬伝』(同)で日本漫画家協会特別賞を受賞。著書多数。

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