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【新書のきゅうしょ】ギリシャ時代から近代までの変貌をたどる 羽仁五郎著「都市」(岩波新書、1949年) (1/2ページ)

 羽仁五郎といえば、すでに70代後半だった1980年頃、数十歳下の舞踊家の花柳幻舟と付き合い、彼女から「ゴローは…」などと呼ばれて、嬉しそうにしていた印象が残っている。

 60年代末に全共闘世代に支持されてベストセラーになった同じ著者の『都市の論理』は今も多く古書市場に出回るが『都市』はあまり見かけない。読みたかった一書で、ギリシャ時代から近代に至るまでの都市の変貌をたどっている。

 著者は都市の本質を「市民」の存在の有無にこそあるとして、「市民なければ都市もない」と論じる。エジプトの或る都市はピラミッド建築のための労働者の住む都市だが、彼らは実質奴隷だったから市民のいない都市だったと述べる。

 対照的にアテネなどギリシャの諸都市には初めて市民というものがあらわれたと指摘する。それに関連して著者はフランスの社会学者ル・プレーの逸話も引いている。

 ル・プレーが学生たちに「鉱山で最も重要なものはなにか」と問うたのに対して学生たちは口々に「石炭」「金属」などと答えた。しかし彼はただひとこと、「鉱夫だ!」と答えたという。

 ギリシャの都市を語る著者の筆は闊達だ。その中心にはじめてあらわれた市場または広場としてのアゴラを称え、エジプトや古代諸王国の都市には見ることのなかった存在だと指摘している。「民衆の集合するところとしてのアゴラがギリシア諸都市の中心となったことが、ギリシア諸都市に実に市民のあらわれてきたことを語っている」。アクロポリスがギリシャ都市の象徴と扱われがちだが、アゴラこそ「ギリシア諸都市をギリシア諸都市たらしめ、いな、かれらをして、真の都市の最初のものたらしめた」と強調する。

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