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【ぶらり、ぶんがく。本と歩く】外出できない人へ捧げる紀行文学 アマゾン川のハードな釣魚行 開高健『オーパ!』 茅ケ崎市開高健記念館 (1/2ページ)

 好きすぎて迷う。

 芥川賞作家でルポライターの開高健(1930~89年)は、いつか小欄でも取り上げるつもりだったが、さて、どの作品にするか。東京五輪に絡めて書くなら『ずばり東京』だが、ボウリング場や映画館などのルポ『日本人の遊び場』はリスペクトを込めて真似事をしたこともあるし、絶筆となった小説『珠玉』も大好きだし…。

 迷ったあげく、今回は、作品を決めてからゆかりの場所を訪ねるやり方を改め、とりあえず茅ケ崎市開高健記念館に行ってみた。『国境の南』に〈ふつう私は小説家として暮している。ここ五年ほどは湘南海岸の茅ケ崎市である。海岸から三百メートルか四百メートルほどのところでひっそり起居している〉と記した自宅が、いまは記念館として公開されている。

 〈悠々として急げ〉〈漂えど沈まず〉〈明日、世界が滅びるとしても、今日、あなたはリンゴの木を植える〉

 数々の名言で知られる開高健。記念館でもその言葉をたっぷり楽しむことができる。コロン、とした直筆の文字には人懐っこさが漂う。人生の滋味を描き出す言葉そのものには感心させられて畏怖すら感じるのに、書かれた文字のかわいいこと。そのギャップがいい。じつにいい。

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