【マンション業界の秘密】プチ成功者のタワマン住民も将来は脱出か - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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プチ成功者のタワマン住民も将来は脱出か

 私は、かねがねタワーマンション(タワマン)を買って住んでいる人は「ニューカマーのプチ成功者」であると、あちらこちらに書いてきた。

 これは大学入学か就職時点で上京して、それなりの成功を収めた人々を指している。

 先日、総理大臣が安倍晋三氏から菅義偉氏に代わった。総理は官邸に住むだろうが、地元には自宅がある。菅氏の地元は横浜市。菅総理の自宅は横浜市内のタワマンだという。今は奥さんが守っているのだとか。奥さんのご出身は静岡県と伝えられている。

 報道されているように、菅さんは秋田県のイチゴ農家の出身。苦労した本物のたたき上げかどうかは議論はあるが、彼がニューカマーであることは確かだ。

 もちろん、成功者に入る。大富豪になったわけではないので、現実的な資力だけに限ると、プチ成功者の範囲かもしれない。私が指摘した「タワマンを買って住む人」という属性にあてはまらなくもない。

 ただ、私のタワマン購入者のイメージは菅さんよりももう少し若い。氷河期世代とか団塊ジュニアと呼ばれる、今は40代の半ばあたりが中心の年代層。菅さんはもう70歳を超えているが、地方出身者同士のカップルが、東京(菅さんの場合は横浜との半々になるのだろうが)でそれなりの成功を収めて住まいを買ったら、それはタワマンだったというシナリオは重なる。

 現状、タワマンはどんどん市場に供給されている。エリアとしては、湾岸の埋め立て地が多い。理由は事業用地を確保しやすいことにある。

 実のところ、東京でも明治期に埋め立てが行われ、早くから市街化したエリアでは、再開発のタワマン計画が浮上すると、必ずといっていいほど周辺住民の反対運動が起きる。日照が阻害されたり、ビル風が発生したりして、環境が悪化すると考えるためだ。

 しかし、周辺に住民がいない湾岸の荒漠とした埋め立て地では、反対運動などは起こりようがない。だから開発しやすい。

 菅さんが住む横浜のタワマン近辺は、主にビジネス・商業エリア。そういう場所でも反対運動は起こりにくい。その代わりに地価が高いので分譲価格も自然に高くなる。菅さんはプチ成功者の中でも上位に位置付けられるだろう。

 何代も前から東京に住んでいる富裕層は、概してタワマン嫌いが多い。「あんな品のない住まいなんか嫌よ」といった感覚である。だから、自分の住んでいる場所の周りにタワマンができることを喜ばない。

 上京とプチ成功の証しとしてタワマンを買いたくなるモチベーションは、ある程度、理解できる。高所から街を眺めるのは爽快な気分だろう。

 しかし、子供か孫の代まで富裕層であり続けると、その頃には、きっとタワマンから脱出しているのではないか。そう思えてならない。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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