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【警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識】サイクロンに立ち向かう無人帆船 温暖化による「気象の凶暴化」 急速に発達する台風の仕組み解明へ (2/2ページ)

 観測が足りないからといって、人間が乗っている船や飛行機が台風などの中心部に突っ込むのは危険である。米国や日本などで行われていないわけではないが、人間にとっても乗物にとっても大変で、このために地域も機会も限られている。

 米国で、この観測のための自動操縦の無人艇が開発された。ハリケーンの中に突っ込んで観測したデータを遠距離の陸地まで送ってくる。全長が7メートルの小型船だ。丈夫に作られてハリケーンに耐えるプラスチック製の5メートルの帆「ハリケーン・ウイング」がついている。電力は太陽電池でまかなうから長い期間の観測ができる。全体はヨットに似ている。

 データは海中や海表面のデータで、いずれも現場で測ったものだ。気温、湿度、気圧、風速、風向、海水温、塩分濃度、波高と周期。これらはハリケーンが成長するときの海中と大気のエネルギーのやりとりを知るために重要である。

 この無人艇は、サイクロンの強い風にも高い波にも耐えて、すでに実績をあげている。サイクロンの本場、大西洋のほか、荒れる北極海や北太平洋にも出かけている。

 無人艇はNOAA(米国海洋大気局)のもとで開発されたものだが、データはWMO(世界気象機関)と、加盟している各国の気象機関にも送られて役に立っている。

 この無人艇がサイクロンの中心部でのデータを集めてくれれば、サイクロンや台風の研究が進むことになろう。

 ■島村英紀(しまむら・ひでき) 武蔵野学院大学特任教授。1941年、東京都出身。東大理学部卒、東大大学院修了。北海道大教授、北大地震火山研究観測センター長、国立極地研究所所長などを歴任。著書多数。最新刊に『多発する人造地震-人間が引き起こす地震』(花伝社)。

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