記事詳細

【昭和のことば】朝日新聞の連載で全国的な言葉に「イカレポンチ」(昭和25年)

 何とも懐かしいことばだ。昭和の後期ぐらいまでは何となく耳にした記憶がある。もとは「いかれ坊んち」と書く上方語だった。意味は「フヌケ+世間知らずの坊」ぐらいのニュアンスだが、この年に朝日新聞に連載された獅子文六の『自由学校』のなかで使われ、全国的なことばとなった。

 意味も「フヌケた男」から発展し、(何をするか分からない)「イカれた男」の意味が加わった。けっして褒めことばではないが、純粋でどこか温かみのあるキャラクターとして、昭和の創作物にたびたび登場した。

 この年の主な事件は、「1000円札発行」「自由党結成(総裁・吉田茂)」「静岡県熱海市で大火」「公職選挙法公布」「山本富士子が第1回ミス日本に選出」「炭鉱国営終わる」「朝鮮戦争勃発」「最高検、『チャタレイ夫人の恋人』押収を指令」「金閣寺全焼」「日本労働組合総評議会(総評)結成」「レッドパージ始まる」「NHK、定期実験テレビ放送開始」「池田勇人蔵相、『貧乏人は麦を食え』発言」など。

 この頃の物価は、たばこ(ピース)が50円、理髪料は60円。朝鮮特需景気が起こり、巷にはアルバイトサロン(アルサロ)が登場した。この年の本は伊藤整『鳴海仙吉』や大岡昇平『武蔵野夫人』、映画は『羅生門』や『自転車泥棒』(洋画)など。

 「できの悪さ」を揶揄(やゆ)することばはいくつも生まれてきた。人の欠点や短所をあげつらうことばは、現代では存在しにくい。だが、本当の多様性を考える上では、十分に必要なことばなのだ。 =敬称略 (中丸謙一朗)

 〈昭和25(1950)年の流行歌〉 「水色のワルツ」(二葉あき子)「白い花の咲く頃」(岡本敦郎)「買物ブギー」(笠置シヅ子)

関連ニュース