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【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】縦断高校野球列島(26)~滋賀~ 水色の近江“三本の矢”支えた小森捕手 瀬田工のゆる~いエース、甲西は初出場ながらも伝統校のごとし! 黄金時代築いた多賀監督 (3/3ページ)

 3人が素晴らしいのは言うまでもない主将で捕手の小森博之の存在が大きい。代わる代わる出て来る投手のボールを丁寧にそして正に身を挺(てい)して受け止めた。先発も含め継投策の投手陣はマウンドに立った瞬間から全力だ。速球はもちろん変化球も思い切り指先で切ったり、指の間から抜いたり、微妙な扱いを駆使する。コースギリギリ、低め一杯を目指す。打者が打ちにくくバットが届かないところを狙う。ワンバウンドや高投もある。でも近江の投手陣は思い切り腕を振り続けた。

 支えたのは小森だ。右の竹内の縦のスライダーに左の島内のカーブや右の清水のシュート。左右もタイプも違う3本の矢を生かし切った。プロテクターとレガーズに覆われた小森の水色のユニホームはいつも土にまみれていた。

 近江の黄金時代を築いたのは多賀章仁監督=写真、1989年からチームを率いてきた。歴代の選手たちにしみ込ませた力は成長しながら受け継がれた。2021年今夏もベスト4まで勝ち進んだ。2回戦大阪桐蔭戦は強豪相手に初回に大量4点を取られ追いかける不利な展開から粘りに粘っての逆転勝ち、準々決勝神戸国際戦は9回、勝利目前の守りで2死無走者からミス続きで追い付かれる最悪の流れから延長サヨナラ。

 多賀監督自身は敗戦を覚悟した場面もあったという。しかし選手たちは諦めない。日頃の多賀監督の指導を信じ、厳しい言葉を糧にこの舞台に臨んでいた。多賀監督の想像を超える勝負根性が養われていた。試合後のインタビューで多賀監督は泣いた。選手たちに感動していた。その涙も美しい近江の水色に見えた。 =次回は京都府

 ■小野塚康之(おのづか・やすゆき) 実況家。1957年5月23日、東京都生まれ。80年学習院大を卒業し、NHKに入局。以降41年間、主に高校野球、プロ野球の実況を担当する名物アナウンサー。2019年からフリー。現在はDAZN、日テレジータス、JSPORTSなどで野球中継に携わる。

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